2015年4月29日水曜日

ナギ

ナギ Nageia nagi (Thunb.) Kuntze
(マキ科 PODOCARPACEAE)

神社で育つナギの木
 子どもの頃住んでいた家の玄関に向かう路地には、ナギの木が何本も植えてあった。小さい頃から葉をむしったり、樹皮をはいだり、実をいくつも集めたり。
 写真のナギは神社の境内に育っていた。幹の太さは大人二抱えほどか。立派な大木だ。幹の色は濃い赤茶色といった感じで、やや紫ががかっている印象もある。樹皮はバリッと剥げるため、幹がまだら模様っぽくなる時もある。 
ナギの葉
 ナギの葉は、紡錘型とでもいおうか、両端が尖った楕円形をしている。緑色が濃く、光沢が強い。ちぎると独特の臭いがする。
ナギの葉のスケッチ
 多くの樹木の葉と異なり、葉の脈は網目を作らず、平行に走っているように見える。これはこれで、意外に珍しいのではなかろうか。
 高校生のとき、修学旅行先で引率の先生が「珍しい木の種を拾った。欲しい人は取りにおいで」といわれ、もらいにいったらナギの実でとてもがっかりした思い出がある。だって、細いとはいえ家の前に10本以上も生えていて、毎日見ている木だもの。その先生には申し訳ないが、珍しいといわれてもねぇ。ただ、修学旅行は、奈良・京都・神戸だったので、もしかしらた由緒ある神社かお寺のご神木が落とした実だったかもしれない。春日大社のナギは1000年以上前に植えられたものとして 有名ですし(春日大社境内のナギ巨樹 http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1397611208363/index.html 奈良市のホームページへ飛びます)。うー、そうするとありがたいもんだったのか。今うだつが上がんないのは、その時の種を大事にしなかった罰が当たってんのかも。スンマセン。
 

2015年4月25日土曜日

アカメガシワ

アカメガシワ Mallotus japonicus (L.f.) Müll.Arg.
(トウダイグサ科 EUPHORBIACEAE)

 つい先日紹介したアカメガシワ。アリを呼んで体を守っているというおはなしの続編です。

●アカメガシワの対捕食者構造に関する研究
 (修士論文の要旨のようです)
http://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/kohshima/Study/abstract/iwami.html

 前回も紹介した上記の文献は、アリを寄せる構造として「花外密腺」と「粒状分泌物」をあげている。そこで、実体顕微鏡でこれらを探してみた。

 まずは花外密腺。普通は蜜は花から出るので、花以外のところから蜜を出す腺をこう呼ぶ。アリが集っていたところは、葉の根元と葉の縁(下の絵、前回のもの)。それぞれの辺りを見てみた。
アリが来ているのは葉の根元と縁の部分
 それぞれの部分を見てみると、お、それらしいものが。ちょっと潤っている感じ。葉の根元から少し横に出た細い脈の上にあるみたい。
葉の根元の花外密腺
 お次は葉の縁。こちらもあるある。葉の根元よりもちょっと小さくて、少しくぼんでいるようだ。こちらも葉脈の先端付近に位置している。
葉の縁の花外密腺。ちょっと小さめ。全くの縁というわけではなく、少し内側にある。
 これらの花外密腺から蜜を出して、アリを寄せているのか。

 次は「粒状分泌物」。若い葉の脈から分泌され、直径0.6mm程度、半透明の袋状でアリの好む脂質の仲間がふくまれている、ということだが。う〜ん見つからない。唯一それかな?というのが、さっきの葉の根元の花外密腺のそばについていた。いつのまにか落ちてしまっていて、写真を取り直すことができなかった。また探そう。
粒状分泌物か?

 もののついでなので、葉の裏の写真を撮ってみた。星空の様でなかなかに綺麗。
葉の裏の拡大。星状毛と腺点がある。
 放射状に広がった針のようなものは星状毛。一本の毛が先の方で枝分かれして四方八方に広がっている。この葉はある程度成長しているので、この透明がかった毛があるが、もっと若い赤い葉では、赤い毛が生えている。
 もう一つ、小さなビーズのようなものは腺点。こちらはアリを寄せるためではなく、捕食者を撃退するためのもののようである。アカメガシワの果皮(実の皮)は毒をもっていて、その毒は果皮の表面の腺点に含まれているそうだ。この葉の腺点も、同じように毒を含み捕食者からの防衛を担っている可能性があるという。

 なるほどなるほど。





シジュウカラ

シジュウカラ Parus major
(シジュウカラ科 PARIDAE)
何か声が聞こえる、ブロック塀の穴
 十日ほど前の朝、子どもを学校へ送り出した帰り、家の近くのブロック塀から、小さな鳴き声のような音に気づいた。音を探ること数分、ようやく、ブロック塀の中から声がすることが分かった。猫の子でも落ちたか?と探すと穴があって、そこから鳴き声が聞こえる。
 覗いてみても真っ暗。声だけはする。しばし、考えてから、携帯電話で撮影することを思いつく。フラッシュも焚けるし、何か写るだろう。
あ、なんかいる。
 お、写った。深さはブロック2つ分というところか。くらくてやりにくいが、とにかく少しズームをして、再度挑戦。
 
あ、鳥だ。
 お、雛だ。巣材は化学繊維の綿?と髪の毛?こんなところで雨ざらしじゃなかろうか。糞とかどうすんだろ。あと、何の鳥?
 改めて夕方に撮影してみた。
あ、親?
 今度はピントが合わなかった。けど、白い頬、背中の緑がかった色・・・おそらくシジュウカラか。
 シジュウカラは大きさはスズメくらいで、スズメよりはちょっとやせ形の体型。留鳥とされていて、住宅地なんかでも一年中見ることができる。ツツピー、ツツピーみたいな鳴き方をする。
 親を脅してしまってちょっと心配したが、翌日からもちゃんと親が出入りしていたので、子育ては継続されている模様。しかし、三日ほど前からあまり見なくなった。タイミングなのか、巣立ったのか、ヘビなんかに襲われたのか、放棄したのか・・・心配だが、またおどかしてしまうかと思うと、覗けないでいる。



2015年4月20日月曜日

アカメガシワ

アカメガシワ Mallotus japonicus (L.f.) Müll.Arg.
(トウダイグサ科 EUPHORBIACEAE)

 若葉の季節、いろいろな樹木が芽吹き始めた。身近な環境での野生の樹木でよく目につくのがアカメガシワ。
アカメガシワの新芽
赤い色の新芽をのばす。この赤い色、実は葉の表面にたくさん生えた「毛」の色。葉が成長してくると、だんだんと赤い毛は減り、葉が本来持っている緑色になる。和名の「アカメガシワ」のアカメはこの赤い色の新芽「赤芽」からきているらしい。
 さて、この写真、赤い新芽の下のやや大きく育っている葉を見てみると、葉の付け根の部分に何やらアリがいる。他の葉にも確かにいる。集っているようだ。
アリが集るアカメガシワの葉。
こちらの葉には、葉の付け根だけではなく、葉の縁にまで。
葉の付け根と葉縁の腺に集るアリ(シリアゲアリの仲間か?)

 調べてみると、アカメガシワは葉の付け根や葉の縁近くに、アリが好む蜜を出す腺があってアリを集めているらしい。なぜか・・・この蜜を出す腺、そして最初に取りあげた赤い毛はいずれも、アカメガシワの防御の工夫らしい。
 芽から伸びはじめのまだ若い時期は、びっしりと生えた毛でガードする。密生した毛でガードするのかと思いきや、「赤い色」が大事な要素らしい。赤い色は昆虫の目には見えにくい色で、赤い色をしていると昆虫の眼には目立たないらしい。
 葉がやや大きくなって赤い毛が落ちる頃になると、蜜腺から出る蜜でアリを集めて、葉に集まる害虫を追い払ってもらう。この他にもいくつか策があるらしい。そこまでして守るとは、相当おいしいのだろうか・・・

(参考)
<アカメガシワの防御について>
●アカメガシワの対捕食者構造に関する研究
 (修士論文の要旨のようです)
http://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/kohshima/Study/abstract/iwami.html

●複数の防御形質を用いるアカメガシワ(トウダイグサ科)の資源配分戦略
 (PDFがひらきます。学位論文の要旨です)
http://www.kagoshima-u.ac.jp/about/renken731.pdf

<昆虫の視覚について>
●人間の目・昆虫の目・機会の目 自然界における昆虫と植物の共進化
 (PDFがひらきます。京都大学の講座?のスライドのようです)
http://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/frp7an/010-001/pdf/8.pdf

●昆虫の視覚世界をたどる —チョウと人間、目がいいのはどちら?—
 (PDFがひらきます。生命健康科学研究所紀要の記事です。)
http://www3.chubu.ac.jp/documents/research_life_health/content/6141/6141_d7db16a6c91c8b63e3b7172f76231633.pdf


2015年3月27日金曜日

スッポンタケ科の何か?

スッポンタケ科の何か?
PHALLACEAE spp.

スッポンタケ科の何かの「卵」の断面
 2年ほど前、植物観察会の最中に、地面にゴムボールのような、卵のようなものを見つけた。何だと聞かれても検討つかないので、2つに割ってみた。一番外側は寒天質というかゼリー質のような透明感のある層で、中心には白い茎のような芯のようなものがある。その芯と表層の間は黒いもので埋められている。
 おそらくスッポンタケの仲間の「卵」ではないかと思うのだが・・・「卵」といっても魚や鳥が生むいわゆる卵ではなく、未成熟のキノコ(幼菌)という捉え方で良いのだろうか。成長がすすむと、中の芯が伸び、表層を破り、立派なキノコになる。ハズ。
 スッポンタケの仲間は、私たちが想像するキノコ(例えば、シイタケとかシメジとかナメコとか)とは違う形をしている。「この山で見られるのか」と出会うのを楽しみにしていた。
 さて、2年後。どうやら出会えたようだ。しかし、雨に打たれ、何とも情けない姿。
雨に打たれてうなだれたスッポンタケの仲間?
 以前見た「卵」の断面から、頭は黒いものだと思っていたけど、これは全身真っ白。種類が違うのか?雨に打たれて流されたのか?本では「悪臭」などとも書かれているが、そばに寄っても大して匂わない。なんとも言いがたい再会となってしまった。

 後から調べてみると、このスッポンタケの「卵」、持ち帰って鉢植えにしてキノコが伸びるまで観察した人もいるようだ。しまった、半分に切った後、どうして良いか分からず、エタノール漬けの液浸標本にしてしまった・・・

2015年1月27日火曜日

コウガイビルの仲間

コウガイビルの仲間 Bipalium sp.
(コウガイビル科 BIPALIIDAE)


近所で見かけたコウガイビルの仲間
 近所や家のまわりの塀などでは、雨が降るとこんな生き物を目にすることができる。頭が半月状に広がったうねうねした生き物。写真のコウガイビルの仲間は、半月状というより三日月状に近い。この頭の部分の形が、日本髪を撫で付けたり、頭皮を欠いたりする道具「笄(こうがい)」に似ていることから、コウガイビルという名前になったらしい。
 この部分が頭かと思いきや、食事をする“口”は、この頭よりも後にあるらしい。
 さて、名前を調べようと思ったが、イマイチよくわからない。このコウガイビルの仲間は長さは10cmもない。色は褐色で、体には縦に3本の黒い線がある。
長いコウガイビルの仲間。
 昨年の秋にはこんなやつも見た。色が緑っぽくてとても長い。20cm強というところか。写真では分かりにくいが、頭の「こうがい」部分は、それほど大きくはならない。
 この他に、体が真っ黒なコウガイビルもいる。年に1〜2回、風呂場に上がってくる。こちらの体長は10cm程度か。全部違う種類だとすると、家のまわりだけで3種類・・・結構すごいなぁ。

Jan. 27, 2015追記
ツイッター上で種類について教えて頂きました。
二枚目の写真の長い種類は、おそらくワタリコウガイビルBipalium kewense Moseley
一枚目の写真の方は、和名なし、とのことでした。
@LandPlanariaBot 様 ありがとうございました。

 調べてみると、ワタリコウガイビルは外来種で、世界中で見られるようです。原産地はどこなのだろう。一枚目の写真の方は「和名なし」とのことなので、記載自体はされているということなのでしょう。いろいろいるんだなぁ。