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コヒロハハナヤスリ Ophioglossum petiolatum Hook.
(ハナヤスリ科 OPHIOGLOSSACEAE)
毎年、庭に数本だけ生えてくるシダを楽しみにしている。
おそらくコヒロハハナヤスリだと思う。
多くの人が抱く「シダ」のイメージからは、ちょっと離れた形をしている。葉は切れ込みがなくやや長いたまご型、胞子嚢はふつうの葉の裏につくのではなく、胞子を作るためだけの葉がまん中にひょろっと伸びる。
それほど希少というわけではないが、自治体によってはレッドデータに選定されている。できれば増やしたいと思うが、庭をどのような状態にすれば良いのやら・・・
ナチシダ Pteris wallichiana J.Agardh
(イノモトソウ科 PTERIDACEAE)
前回のヤツデに続き、手のひら型の葉をもつ植物、ナチシダ。手のひら型といっても、ヤツデより繊細な分かれ方をしている。
まず、大きく5つに別れ、別れたそれぞれにはさらに細かく切れ込みが入り、レース編みの様になっている。とてもカッコいいシダだ。
単純にカッコいい。
ナチシダは、こちら(九州)では、あるところにはあるので普通に思っていたが、実は温かい地方のシダらしい。北限は静岡県で、その自生地は天然記念物に指定されている。
ナチシダ自生北限地|文化遺産オンライン
ただ、この場所のナチシダは保護政策が行われているにもかかわらず、減少しているらしい(2016年の記事、下記リンク)。自然保護って難しいんだなぁと、素直に感じてしまう記事だ。
ジュンサイは増えすぎ!ナチシダは激減?天然記念物保護の皮肉な結果。|森本毅郎 スタンバイ!TBSラジオ(2016.7.19 火曜日11:30)
じゃあ、増えれば良いのかというと、そうでもなく。実は、ナチシダは日本に野生する在来の草食大形哺乳類ニホンジカがあまり好まない植物といわれている。つまり、ナチシダが増えてきた、目立ってきたという環境は、ニホンジカが増えているのかもしれない。近年、ニホンジカが増えて問題になってきている。
シカが日本の自然を食べつくす !?|環境省(pdfが開きます。)
野生鳥獣による森林被害|林野庁
格好よくてとても好きな植物の一つだけど、増えてきたら要注意なんだな・・・
ヤツデ Fatsia japonica (Thunb.) Decne. et Planch.
(ウコギ科 ARALIACEAE)
冬にあった観察会で、花穂が出たヤツデを見ることができた。今はもう春なので、実が大きく成長している頃かもしれない。子どもの頃、このヤツデの実を球につかう空気でっぽうを細い竹で作ってくれたことがある。しばらく使っていたら壊れてしまったので、もう一度作ってと頼んだが、「自分で作れ」といって作ってくれなかった。いい思い出なんだか、悪い思い出なんだか…
この写真ではうまく写っていないが、ヤツデの葉は手のひら状に大きく切れ込んでいる。その形からか「てんぐのはうちわ」という別名があるらしい。天狗の羽でできているといわれる天狗がもつ羽団扇に形が似ているかららしい。googleの画像検索で「天狗の羽団扇」を検索すると、かなりの割合で植物の画像が混じっているのは面白い。多くはヤツデだが、ハウチワカエデ、コハウチワカエデも混じっている。
「天狗の羽団扇」google画像検索結果
「天狗の羽団扇」の別名は、単に形が似ていることからきているのだろうなぁと思う。というのも、ヤツデと天狗の関わりは希薄な気がするから。個人的には、天狗は山の神様、あるいは妖怪だったりと、奥深い山に存在するイメージがある。一方、ヤツデが好む生育環境は、温かい地方の海岸近くの林であり、両者の存在が重なる範囲がすごく狭い気がするから。
海岸近くの林に生育するヤツデだけど、この写真のヤツデは今の海岸線から約9km離れた山中に生えていたもの。なんとなく「海岸近く」とは言いがたい。しかし、この場所の近くには縄文時代の貝塚があり、縄文時代には海岸線が陸側に大きく入り込んでいた(縄文海進)ことが分かっている。となると、この場所も立派な「海岸近くの林」だった可能性があるわけだ。このヤツデは縄文時代の海岸線の名残かも、と思うと、すこし感慨深くなった。
エビネ Calanthe discolor Lindl.
(ラン科 ORCHIDACEAE)
自分が子どもの頃に、「エビネブーム」があったと記憶している。植木や苗を売る店やコーナーではエビネが売られ、「山採り」とかいう言葉が飛び交っていたような・・・それと同時に、希少とか絶滅危惧とか減っているという言葉も聞いていた。なので、子どもながらに、とても少なくなっている貴重な植物だと感じていた。
その子どもの頃から、うん十年程たっている今でも、エビネは希少な植物のままらしい。環境省のカテゴリで準絶滅危惧(NT)、多く(というかほとんどの)都道府県で絶滅危惧I類、絶滅危惧II類、準絶滅危惧などに選定されている。
RDB図鑑 エビネ|生き物ログ(環境省)
上記のリンクの解説によると、やはり乱獲が減少の大きな原因の一つのようだが、一方で増殖技術も進んできているようで、状況が良くなればいいな、という感じ。
そんなエビネが生育しているところに数年前でくわした。あまりにうれしくて、それからは毎年一回、花を見に出かけている。今年も見ることができた。
例年なら、道から逸れて林に入り、咲いている株を探して回るのだが、今年は道端に咲いていた。ありがたい。
おお、なんか萼(がく)の赤みが強いな。この萼の部分の色に変異があることが、園芸的な魅力の源になっているらしい。
いつまでもここで生き続けて欲しいものです。
ネズミムギ Lolium multiflorum Lam.
(イネ科 POACEAE)
少し前に、twitterで「観察スケッチ」というものが流れてきた。
とにかく、よく見て、よく観察して、ものの形や構造、動きや機能を理解し、スケッチするというもので、デザイン関係の訓練の一つとして紹介されていた。
検索するとすごい力作がゾロゾロと引っかかってくる。
「観察スケッチ」でのGoogle検索結果
自分も挑戦してみようと辺りを探して見つけたイネ科植物・・・ネズミムギ。道端にいっぱい生えていた。
真っすぐ伸びた茎に、小穂(花の集り)が規則的に左右交互についている。小穂から出ている、紫の糸くずのようなものは雄しべの先の葯(花粉の入った袋)。今まさに開花中、というタイミングだったよう。
牧草に使われるヨーロッパ原産の植物らしいのだが、日本中どこでも生えていて、広く広がる外来生物ともいえる。で、どんな性質があるのかな?どんな研究がされているのかな?としらべてみたら、畑の雑草としての研究がずらずら。
えー、困ったちゃん扱いなのかぁ、こんなにカッコいいのに・・・
さて、このネズミムギの観察スケッチはというと、要修行という感じ。
コンニャク Amorphophallus konjac K.Koch
(サトイモ科 ARACEAE)
一度コンニャクの花見てみたいと思いつつもなかなかみる機会がなかった。コンニャク畑で見れるのかな?時々山の中に(おそらく畑から逃げ出して)自生しているので時期を合わせれば見れるのかな?などと思っていたのだが、そうはうまくいかないもので・・・
ところが先日、誘われてキンランを見に行ったとき、訪れた農家さんの庭先にコンニャクの花が!!!
でけー、高さが腰くらいまであったので、1mくらいあるんじゃね?何本もあるよ!
まん中に花穂があって、そのまわりを大きく発達した葉:仏炎苞(ぶつえんほう)がとりまく姿は、サトイモ科植物の花の基本の形だが、これまで見たことのあるテンナンショウ属の花とは存在感が違うなぁ。
ああ、良かった。
キンラン Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume
(ラン科 ORCHIDACEAE)
先日お誘い頂いて、キンランを見に行った。とても綺麗で、美しかった。
ただ、寂しいかな。一株だけだった。多いところにはもっとあるのだが・・・
この場所でキンランが少ないのは実は理由があって、気づく人は上の写真で気づいてしまうのだけれども。ここはたけのこ掘り用の竹林で、キンランが本来が生えるような環境ではない。キンランはブナ科樹木からなる雑木林に生育する植物で、ブナ科の樹木の根に外生菌根を作って共生するイボタケ科やベニタケ科などの菌類に頼って生活しているそうだ。
外見は緑色をしていて普通の植物のようだが、かなり菌類に依存しているらしく、植え替えたり、鉢あげして維持するのはとても難しい。菌がいないと栄養が足りず、いずれ枯れてしまうらしい。そのため、自然保護のための移植や増殖の研究も盛んに行われている。
竹林の持ち主のお話では、この竹林も以前は雑木林で、子どもの頃は仏さん花として摘むほどたくさん生育していたらしいが、竹林に変わり、年が経つに連れてだんだんとキンランも減ってきたそうだ。
竹林の中にはコナラやクヌギ、クリがわずかに残されていて、そのお陰でこのキンランも生き残っていたのだろうなぁ。
さて、キンランを見ていて、以前「ランの花は上下逆さに咲く」と聞いたことを思い出したので、近寄って花の柄を良く見てみた。
確かにどの花の柄もねじれて、花が180°くらい回転しているようだ。なんか都合がいいんだろうなぁ。