2018年5月26日土曜日

ヤツデの花

ヤツデ Fatsia japonica (Thunb.) Decne. et Planch.
(ウコギ科 ARALIACEAE)

 冬にあった観察会で、花穂が出たヤツデを見ることができた。今はもう春なので、実が大きく成長している頃かもしれない。子どもの頃、このヤツデの実を球につかう空気でっぽうを細い竹で作ってくれたことがある。しばらく使っていたら壊れてしまったので、もう一度作ってと頼んだが、「自分で作れ」といって作ってくれなかった。いい思い出なんだか、悪い思い出なんだか…


 この写真ではうまく写っていないが、ヤツデの葉は手のひら状に大きく切れ込んでいる。その形からか「てんぐのはうちわ」という別名があるらしい。天狗の羽でできているといわれる天狗がもつ羽団扇に形が似ているかららしい。googleの画像検索で「天狗の羽団扇」を検索すると、かなりの割合で植物の画像が混じっているのは面白い。多くはヤツデだが、ハウチワカエデ、コハウチワカエデも混じっている。

 「天狗の羽団扇」google画像検索結果

 「天狗の羽団扇」の別名は、単に形が似ていることからきているのだろうなぁと思う。というのも、ヤツデと天狗の関わりは希薄な気がするから。個人的には、天狗は山の神様、あるいは妖怪だったりと、奥深い山に存在するイメージがある。一方、ヤツデが好む生育環境は、温かい地方の海岸近くの林であり、両者の存在が重なる範囲がすごく狭い気がするから。

 海岸近くの林に生育するヤツデだけど、この写真のヤツデは今の海岸線から約9km離れた山中に生えていたもの。なんとなく「海岸近く」とは言いがたい。しかし、この場所の近くには縄文時代の貝塚があり、縄文時代には海岸線が陸側に大きく入り込んでいた(縄文海進)ことが分かっている。となると、この場所も立派な「海岸近くの林」だった可能性があるわけだ。このヤツデは縄文時代の海岸線の名残かも、と思うと、すこし感慨深くなった。





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