2011年10月22日土曜日

ウメバチソウ

 <2011南阿蘇外輪山で見た植物_6>
ウメバチソウ Parnassia palustris L. var. palustris
(ユキノシタ科 SAXIFRAGACEAE)
ウメバチソウの花
 日当りよくやや湿った場所を好むウメバチソウ。草のかげから長い茎をのばし、その先にひとつだけ花を咲かせる。花びらは5枚。花のまん中にめしべ、そのまわりにうすい黄色の葯(やく:花粉のふくろ)をつけたおしべがある。おしべの長さが違うものが2本ほどある。おしべが成熟する時期がちがうのだろうか。


 写真をよく見るとさらに細いひげのようなものが・・・これは仮雄蕊(かゆうずい)や仮おしべとよばれるもの。おしべが花粉を作るはたらきをなくしたもの、と考えればいいか。では、何をしているのか。飾り?蜜?ウメバチソウは虫によって花粉を運んでもらうようなので、やはり虫を呼ぶ働きをしているのかもしれない。


 ウメバチソウの「ウメバチ」ってなに? 多分、花の形が梅のようで、家紋(かもん:家のシンボルマーク)の梅鉢紋(うめばちもん)に似てることからきているらしい。
  (参考)「家紋辞典と家紋データ(梅 うめ)
       http://www.otomiya.com/kamon/plant/ume.htm

 家紋の画像を見てみると確かに似ている。梅の花に似ている植物の名前に「ウメ〜」とか「バイカ(梅花)〜」ではなく、家紋をもってくるあたりが粋だねぇ。ちなみに、私のうちの家紋は「丸に梅鉢」。だから、ウメバチソウにはちょっと親近感がある。

2011年10月21日金曜日

センブリ

<2011南阿蘇外輪山で見た植物_4>
センブリ Swertia japonica (Schult.) Makino
(リンドウ科 GENTIANACEAE)
センブリの花
 足もとに小さく咲くセンブリの花。高さもせいぜい10cm程度。とても苦い植物で、「千回振り出してもまだ苦い」ので「千振り(センブリ)」の名がついたらしい。「振り出す」の意味が分かんないけど。この苦みが胃にきく、ということで薬としてもつかわれる。


 阿蘇ではこのセンブリを摘むのが季節の行事だったそうで、季節のものの収穫であると同時に、貴重な現金収入になったらしい。阿蘇の人々の生活や文化と関わってきた植物なんだなぁ。


 日当りよく乾いた環境に生え、阿蘇に特有という訳ではないけれど、阿蘇の特徴である草原を好む植物。

2011年10月18日火曜日

ハバヤマボクチ

<2011南阿蘇外輪山で見た植物_4>
ハバヤマボクチ Synurus excelsus (Makino) Kitam.
(キク科 ASTERACEAE)
ハバヤマボクチの花。
 阿蘇では草原や外輪山の尾根あたりなど、明るいところにはえる背の高いキク科の植物。写真のハバヤマボクチは私と同じくらいの背丈だったので、高さ160〜170cmといったところか。

 花も大きく直径5cmくらいはあり、周りはごく細い毛でおおわれている。色はそれほど派手ではないが、茶色のような紫色のような風合いで、花の大きさと背の高さが相まってかなりのインパクトがある。

 「ハバヤマボクチ」とは聞いただけではよく意味の分からない名前だが、「ハバヤマ」は「葉場山(はばやま)」で阿蘇の草原のように草を利用する目的の山のこと、「ボクチ」は火打石や火起こし道具でできた火を最初に移し火種にするための「火口(ホクチ)」がなまったもの、と一般にいわれている。花のまわりの毛をあつめて火口につかったのだろうか。

2011年10月16日日曜日

マツムシソウ

<2011南阿蘇外輪山で見た植物_3>
マツムシソウ Scabiosa japonica Miq.
(マツムシソウ科 DIPSACACEAE)
マツムシソウの花。たくさんの花が集まっている。
 秋の阿蘇に咲くマツムシソウ。この日はタイミングが良かったらしく、お花畑になっていた。薄紫色の小さな花がたくさん集まってひとつの花のようになっている。花の集まりの外側にある花は写真のように花びらが長くのびている。これで花がより大きく、目立つようになる。花粉を運んでくれる虫を呼んでいるのかな?


 マツムシソウは何度も冬を越して成長し、最後に一回だけ花を咲かせ、種子を作ったら枯れてしまう「一回繁殖型(いっかいはんしょくがた)」という一生をすごす。だから、花が咲いているマツムシソウを持って帰っても枯れてしまうし、花を摘むだけでもマツムシソウにとっては生涯最後の一大イベントをつぶされることになる。山で見かけたら、大事に、やさしく見守ってあげてね。

2011年10月15日土曜日

アキグミ

<2011南阿蘇外輪山で見た植物_2>
アキグミ(グミ科)
Elaeagnus umbellata Thunb. var. umbellata
アキグミ。果実は小さく丸い。ややシブい。
 秋に実るからアキグミ。山などにかなり普通なグミの仲間。グミの仲間には、葉の裏がてらてらと光るものが多い。このテカリは葉の裏に魚の鱗のような毛が密生することで生じる。顕微鏡等でこの毛を見るととても美しい。が、知り合いの高校の先生から、この毛を見た子どもたちが「気持ち悪い」と叫んだこともある、という話を聞いた。そうかぁ・・・

2011年10月14日金曜日

ヤマボウシ

<2011南阿蘇外輪山で見た植物_1>
ヤマボウシ(ミズキ科)
Cornus kousa Buerger ex Hance subsp. kousa


ヤマボウシの果実。熟したものは甘い。


今回からしばらくは、阿蘇南外輪山の植物を紹介。


ヤマボウシ。ミズキ属の植物は、側脈が葉の先にあつまるように流れる特徴的な葉を持つ。ヤマボウシもそんな葉をつける。今は実が熟す季節で、写真のような果実がたくさんなっていた。真っ赤に熟して柔らかくなった果実は、食べられる。意外に甘みが強くびっくりした。中にはぬるぬるに覆われた、やや大きめの種子が入っている。ジャムとかできないかなぁ。


写真のように、ぽつんとついた果実。これがひとつに見えるけど、実はいくつかの果実が互いに引っ付いてできた“集合果”と呼ばれるもの。集まって甘くて大きな実にすることで大型の動物に食べさせ、より遠くへ運んでもらおうという作戦なのかな?


ヤマボウシの仲間として身近な植物には、街路樹や庭木等に植えられているハナミズキ(アメリカヤマボウシ)がある。こちらは集合果にならない。食べられるかどうかわからない。

2011年10月13日木曜日

白い花のツユクサ

白い花のツユクサ
Commelina communis L.
白い花を咲かせるシロバナツユクサ。昼の撮影のため、花は閉じかけてます。
ツユクサといえば青色、と思っていたけど白いのもあるのだな。なかなか清楚で綺麗だ。BGPlantsYList植物名検索で検察をしてみるとシロバナツユクサ Commelina communis L. f. albiflora Makinoというものがヒットする。学名に“f.”と入っているので、品種というランクに入れられていることが分かる。写真の白い花のツユクサはそのシロバナツユクサにあたるものなのかな。


普通の青いツユクサにまぎれて咲いていた。そういえば中学や高校で花の色の遺伝について問題を解いた記憶がある。ツユクサもテスト問題で出るような分かりやすい遺伝をするのだろうか。簡単な遺伝だとしても、白花の遺伝子頻度が結構低そう。「任意に交配するとして、次世代の白花の個体の出現頻度を計算せよ」みたいな問題になるか?