2014年4月24日木曜日

ネコノチチ

ネコノチチ Rhamnella franguloides (Maxim.) Weberb.
(クロウメモドキ科 RHAMNACEAE)

道路脇に生えてたネコノチチ

 山裾の道沿いを歩いていたら、目の端に見慣れない植物を捉えた。とっても珍しいというわけではないんだけど、山に行きさえすれば必ずあるというほど普通な植物ではない。名前はネコノチチ。この植物の特徴の一つが葉序、つまり枝に葉がつく順序、並び方。葉が枝にどのようにつくか、というのは植物によって様々だが、代表的なのものに互生と対生がある。互生は、枝に葉が右、左、右、左と交互に付く。対生では枝の一カ所から左右に1枚ずつ、計2枚が対になって付く。
ネコノチチが示すコクサギ型葉序。
 しかし、ネコノチチは上の写真のように、右、右、左、左と片方に2枚ずつ付く。これをコクサギ型葉序という。コクサギ型葉序、というくらいだからコクサギも同じようなつき方をする。

 花はどんな感じかというと、こんな感じ。あんまり目立つ花ではない。葉の根元にいくつかまとまってつく。
ネコノチチの花。
 花の中心にあるのがめしべで、そのまわりの五つがおしべ。写真では分かりにくいが、おしべは小さな花弁で縦にくるっと巻かれている。花が咲くのが6月頃、そして八月頃には実がなる。
ネコノチチの果実。まだ黄色
 この果実の形が、ネコノチチの名前の由来だそうな。ネコノチチは「猫の乳」つまり、猫の乳頭に似てるのと。そういわれても猫のおっぱいをマジマジと見たことない・・・この果実、写真では黄色だが、時間が経つと赤、黒と変化しながら熟す。その変化は果実によってまちまちなので、時には同じ枝で三色の入り交じったカラフルな状態となる。これは結構目立つので、実は鳥などを呼び寄せているのでは?などと想像したりして・・・





2014年4月21日月曜日

フリーデルマイマイ

フリーデルマイマイ Aegista friedeliana friedeliana
(オナジマイマイ科 BRADYBAENIDAE)

フリーデルマイマイ、だと思う。
 なんかけもけもしたカタツムリ。たぶんフリーデルマイマイだと思う。普通種らしいが初めて見た。カタツムリといえばこの辺りではツクシマイマイかコベソマイマイかウスカワマイマイかみたいな感じなので、ちょっと山がちなところを歩くだけで見たことない種類がいるのは新鮮で驚きだった。

ニクウスバタケ

ニクウスバタケ Coriolus brevis (Berk.) Aoshima
(多孔菌科 POLYPORACEAE)

木材からでるニクウスバタケ
ニクウスバタケ、と教えてもらった。オレンジ色と縁の白色が美しくて気になった。本などを見るともっとたくさんが群生するものらしいが、これはやや控えめか。これからもっと増えるのだろうか?

 ナラ、カシ、シイなどのいわゆるドングリの木の枯れ木や切り株に生える、極普通のキノコだそうだ。この辺りから覚えていくと、少しはキノコのことも覚えていけるかも・・・

キドイノモトソウ

キドイノモトソウ Pteris kidoi Sa.Kurata
(イノモトソウ科 PTERIDACEAE)

キドイノモトソウ。青い矢印は胞子をつける胞子葉、白い矢印は胞子をつけない栄養葉。
 キドイノモトソウというのを教えてもらった。石灰岩地に生育する。上の写真には葉の広いもの(白矢印)と狭いもの(青矢印)の二つがあるように見えるが、どちらもキドイノモトソウ。この違いは葉の裏に胞子嚢をつけているかどうかの違い。胞子をつけている方(青矢印)は胞子葉と呼ばれ、次代をになう胞子を作り飛ばす役割をもった生殖用の葉である。胞子をつけない方(白矢印)は、もっぱら光合成をおこなって栄養を作るため栄養葉と呼ばれる。

 イノモトソウに近縁な植物だが、やや形が違う。葉のまん中の軸に、翼(よく:帯状の葉のような部分)があるのがイノモトソウ(下の写真右)、ないのがキドイノモトソウ(下の写真左)だそうだ。

キドイノモトソウ(左)とイノモトソウ(右)の比較。中軸の翼(黄色矢印)の有無で見分ける。
 石灰岩地を好む植物ということでややまれなので、大事にしたいものである。

2014年4月20日日曜日

オオバノハチジョウシダ

オオバノハチジョウシダ Pteris terminalis Wall. ex J.Agardh
(イノモトソウ科 PTERIDACEAE)


オオバノハチジョウシダ。葉の長さ約1m。しかしこれでも小さい方。
 山地の湿ったとこを歩いていると、大きなシダに出会うことがある。葉は櫛の歯のように切れ込み、時には2m近くにもなる。とても大きくなるが、イノモトソウ科ということで、身近にあるイノモトソウの仲間。

 これは生えているとついつい標本にしたくてとってしまうが、大きな植物は折り畳んで標本にするのが面倒かつコツがいり、いつも後悔してしまう・・・

イノモトソウ

イノモトソウ Pteris multifida Poir.
(イノモトソウ科 PTERIDACEAE)

身近なシダ。イノモトソウ。

 シダに馴染みがないといっても、これは見たことあるだろう。人家の庭、道端の石垣の隙間、コンクリの割れ目、ちょっとした隙間に必ずと言ってもいいほど生えているシダの仲間である。

 特に利用されることもなく、かといって害があるわけでもなく、私たちの近くに極普通にある植物。それだけに、ついつい見過ごしてしまう。

フトヒルムシロ

フトヒルムシロ Potamogeton fryeri A.Benn.
(ヒルムシロ科 POTAMOGETONACEAE)

フトヒルムシロ

 池などのやや水深があり流れの緩やかな環境に生育する水草。水底に根を張り、水面まで茎をのばす。水中と水面の葉では形が異なる。水中にある葉は細長く沈水葉と呼ばれ、水面に浮く葉は幅広く浮葉と呼ばれる。

 水草には四つの生活型があるといわれている。大まかに言うとこんな感じ。

  1. 抽水植物:水底に根を張り、水面よ上まで高く伸びる。水深が浅い場所に生える。イグサホタルイガマ、ヨシなど
  2. 浮葉植物:水底に根を張り、茎を長く伸ばして水面に葉を広げる。抽水植物より水深のある場所に生える。ヒシなど
  3. 沈水植物:水底に根を張り、水中に没して生活している。水流のある環境に生育している。茎や葉は柔らかくしなやかで、流れのある環境に適応していると考えられる。エビモ、オオカナダモなど
  4. 浮遊植物:水底に根を張らず、水に浮かんで生活する。水深の制約がなく、開けた水面を独占できる。アオウキクサなど
 このフトヒルムシロは2の浮葉植物とも3の沈水植物とも言える。温かい季節には浮葉を増やし旺盛に成長したり、やや流れが強い場所では沈水葉が多くなったりと、季節や環境によって生活の仕方を微妙に変えて生き延びているようだ。

ヒメガマ

ヒメガマ Typha domingensis Pers.
(ガマ科 TYPHACEAE)

細いソーセージ ヒメガマ

 前回のガマよりも細い花穂をつけるのがヒメガマ。ガマとの見分けは、ソーセージの太さを見ればだいたい分かるんだけど、厳密には少し違う。ソーセージ(雌花の集まり)の上の方に枝がでていてそこに雄花の集まりが付くんだけど、そのソーセージと雄花の集まりの間に隙間があり、花が付いていない枝があるのが、ヒメガマです。ソーセージと雄花の集まりが互いにひっついているのがガマと考えればいいかと。

 ただ、最近モウコガマTypha laxmannii Lepech.という種が、ヒメガマと混同されているという報告が出た。
日本のモウコガマ : 兵庫県産「モウコガマ」の再検討
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009495497
 雌花に小苞片というピラッとしたものが付いているかどうかが区別点で、あるのがヒメガマ、ないのがモウコガマということだ。今シーズンはちょっと調べてみようか。

水辺のソーセージ 「ガマ」

ガマ Typha latifolia L.
(ガマ科 TYPHACEAE)

用水路に生えるガマ

 夏になると水辺に1m以上もなる背の高い植物が生える。その茎の先には大きなソーセージのようなものがつく。これがガマ。このソーセージは雌花の集まり。見た目には大きな花びらもないので、咲いているのかどうかもよくわからない。これは、花粉を風に運んでもらう風媒花なので、虫に花粉を運んでもらう花の様に、虫を引きつける華麗な花びらは不必要で発達していない。
 
 古事記だったか、因幡の白ウサギが、ワニ(サメ)をだましたために毛皮をはがされ泣いていたところ、大国主の上がガマの綿毛をつけるようアドバイスした、と言う話がある。

 これに出てくるガマはこのガマ(ただし、ガマの仲間はいくつかあるので、この種かどうかは不明)。このソーセージの部分は、綿毛を持ったタネが綺麗に折り畳まれてぎっしり並んでできている。これをほどくとタネの綿毛が広がり、フワフワになる。この綿毛が風を受けて飛び、新たな生育地へタネが運ばれる。受粉においても、種子の散布においても風に頼る優雅な植物だな。

ホタルイ

ホタルイ Schoenoplectiella hotarui (Ohwi) J.D.Jung et H.K.Choi
(カヤツリグサ科 CYPERACEAE)

湿地に生えるホタルイ
 前回紹介のイグサとよく似ている。葉は筒状になって茎の根元を包み、外観のほとんどは茎という体制をしていて、ツンツンとした印象がある。ぱっと見て違うのは花の集まりのぶぶん。ホタルイの仲間はたまご型の花穂をしている。イグサは散状なので・・・と書いて写真を探したがない。普通種の写真ってなかなか撮らないんだよ・・・反省。
ホタルイの花穂はたまご型
 以前に紹介したイヌホタルイ(http://tetsuya34.blogspot.jp/2011/09/blog-post_13.html)との見分けは、めしべの先(柱頭)がいくつに分かれているか。このホタルイは先が3つに分かれる(イヌホタルイは2つに分かれる)。これは虫眼鏡で観察しないと分からない。

 虫眼鏡で見るような小さなめしべの分かれ方で種を分けるのか?そんだけの違い?という疑問を持つ方も多い。ホタルイは自然の湧水地や山に近い水田周辺などのやや自然度が高い環境に多く、イヌホタルイは低地の水田地帯など人為的影響が高い場所に多く生える傾向があるようだ。また、細胞の中の染色体の数を調べると、犬ホタルイの方が多い。生活の場所も、遺伝的な特徴も違うので、外観はよく似ていても別の種にされている。



イグサ

イグサ Juncus decipiens (Buchenau) Nakai
(イグサ科 JUNCACEAE)

湿地に生えるイグサ

 湿地や湖沼、休耕田などの水が浅く張るようなところの生えている。湿地の植物を観察するようになると必ず気づく、極普通に出会える植物。葉は筒状になっていて茎の根元を包むだけになっていて、上に高く伸びているのはほとんど茎、という植物。長く細く伸びる茎が広く利用されている。
 
 イグサは別名とうしんそう(燈芯草)という。この茎の芯を灯明の芯に使ったためらしいのだが、さすがに実際に使っている様子を見たことはない。灯明っていつぐらいまで使われてたんだろう?

 イグサは漢字で書くと「藺草」。日本人であればおなじみの畳表に使われる「藺」と同じ種の植物である。ただし、栽培されて畳表などに利用されるものはコヒゲJ. decipiens (Buchenau) Nakai 'Utilis'と呼ばれるもので、花が小さく、あまり咲かないそうだ。写真のように花が咲くと、その部分に節ができて折れやすくなって畳表への加工に不向きであるため、花が咲きにくいように品種改良されたのだろう。

 熊本県は畳表生産日本一で、国内生産の95%を占めるそうだ。宇城、八代、球磨地方などで生産が盛ん。熊本市から南に下り竜北町辺りになってくるとイグサ畑(田?)が目立つようになってくる。
(参考ページ)
畳がいちばんキャンペーン
http://www.yatsushiro.org/tatami/campaign/<br /> 熊本県い業生産販売振興協会
http://www.kumamoto-tatami.com/

 畳といえば、その肌触りと香りが特徴。新しい畳の香りはうれしい。しかし、野に生えているイグサをちぎって臭いをかいでも、畳の香りはしない。草の臭いがするだけ。畳表の香りは、イグサを収穫したあとに行われる「泥染め」という行程で生まれるそうだ。
(参考ページ)
畳表の泥染め
http://www.tatami-kumaki.com/sendo.htm
さて、このイグサ、実は史前帰化植物の一つと考えられている。史前帰化植物とは、字のごとく、「史前」つまり歴史が記される以前に、本来の分布域からヒトの力で移されて定着した植物のこと。大陸や半島からのヒトの移動および稲作や畑作の伝来にともなって日本に入ってきたと考えられている植物たちである。
 
 イグサはたまたまついてきたのか、ゴザなんかに利用するために持ち込まれたものが逃げ出して野生化したのか・・・?
 
 野生のイグサをつかって、観察会のときの簡単な工作とかできないかなぁコースターとか。