2017年9月28日木曜日

マヤラン

マヤラン Cymbidium macrorhizon Lindl.
(ラン科 ORCHIDACEAE)

 先日、仕事で訪れた施設で、その施設の人(女性!!)に「見せたいものがあります」と言われて案内され、見せてもらったのがコレ!。

相変わらず美しいねぇ。マヤラン。
 
 ところで、マヤランの「マヤ」ってなに?ちょっとググってみたら、神戸市立森林植物園のホームページに説明があった。日本に於いて初めて採集されたのがどうやら摩耶山らしく、そこからとってきたようだ。もう少し分かったら、追記します。
 さて、こいつ、葉がないんだよね。

 と、ここまで書いてふと手が止まった。今、マヤランの事を「こいつ」って書いた。実は生物を研究したり、観察したりする人って、その対象の生物をかなり擬人化して呼ぶ事が多い。
 今まで聞いたことがあるのは、「彼・彼女」、「彼ら・彼女ら」、「この人・この人たち」、「この子、この子ら」、そして「こいつ、こいつら」。あまりにも熱心に見つめすぎて親近感が沸いてしまったり、彼らの行動を自分の行動のように投影してしまったり、という事なのかも。
 しかし、「こいつ」はないな。ちょっと見下し感がある。うーん。まあ、花だし「彼女」でいこうか(両性花だけど)。

 閑話休題。
 さて、よく見ると彼女らには葉がない。植物といえば、小中学校で習うが、緑の葉を拡げて太陽の光を浴び、光合成によって有機物を合成する、というのが一大特徴。自分で栄養を作って生活できる、本当の意味での「自給自足生活」ができる唯一の種族が「ザ・植物」。なのだが、彼女らには葉がない。どうしているのか。

 実は、根で菌類と共生しており、その菌達が周囲の土壌に含まれる有機物をせっせと分解して得た栄養分をもらって生活していて、「菌従属栄養生物」と呼ばれている。その彼女らの生活については、国立科学博物館のホームページに分かりやすい解説がある。(pdfファイルが開きます)
 この解説によると、マヤランはベニタケ科、イボタケ科、シロキクラゲ科と共生し、この共生している菌は特定の樹木としか共生しないようです。となると、樹木---菌類---マヤランは密接につながっているようです。

 一口に「植物」といってもいろんな生き方があるのだな。
 

2017年9月23日土曜日

クワイ

クワイ Sagittaria trifolia L. 'Caerulea' 
(オモダカ科 ALISMATACEAE)

 とある役場の横の水路にずいぶんと植物が繁っているのに気づいてのぞいてみた。

 役場の敷地を離れると、上流も下流も三面張りの何も生えていない水路になるので、役場の付近だけ植物が生えるようにしたんだろうな。ビオトープ的な感じで。ところどころにベンチも設置してあったので、市民の憩いの場としての利用を考えての整備なのだろう。
 その中に、あまり見慣れない植物があった。

 前に紹介したオモダカに似て葉の形は鏃型だが、オモダカよりかなり幅広い。そして丈が高い。際まで降りれなかったので正確に測ったわけではないが、高さ1mくらいはありそう。オモダカの仲間だろうけど、オモダカではない。オモダカの近縁種アギナシとも違うようだ。詳しい人に写真をみてもらったところ「クワイ」だろうと返事をもらえた。
 「クワイ」、そうおせち料理の慈姑(くわい)。丸くてツンと角が出た野菜。お正月くらいしかお目にかからないが、さらに、我が家ではおせちに慈姑を使うことがないので、私自身は見た事もほとんどない。それはともかく、あの野菜の慈姑は、この植物が地下の部分に作る塊茎ということだ。

 姿がオモダカに似ているとおり、クワイはオモダカの栽培品種という位置づけになっている。

 地下の塊茎を見てないのも残念だが、花も見れなかったのが残念。




2017年9月3日日曜日

オモダカ

オモダカ Sagittaria trifolia L. 
(オモダカ科 Alismataceae)

 車を運転していて、均質でない外観の水田に気づいた。
 なんか雑草が入り込んでいる。イネ科やカヤツリグサ科の植物ではない様子。ところどころに白い花も見える。車を止めて、覗きに行く。地元の人と思しき軽トラの運転手の視線が痛い。

 三方向に極端にのびた鏃のような特徴的な形の葉で、白花を咲かせるオモダカだった。よくみていると、果実もあった。花期は比較的長いのかも。


 代表的な水田雑草でよく見られるとされるが、私が住んでいる地域(平野部)ではあまり見かけない。農薬の問題なのか除草が徹底しているのか、その辺が関係しているのかも。コレを見かけたのも、やや山がちのところだし。

 オモダカに限らず、水田雑草と呼ばれる植物たちはなかなかに綺麗だし、かわいらしい。しかし、農業する人たちからはやはり厄介者。残って欲しいとは思うが、そうも主張できないことでもあり、なんとなく寂しいところ。


2017年7月27日木曜日

タシロラン

タシロラン Epipogium roseum (D.Don) Lindl.
(ラン科 ORCHIDACEAE)

 以前にもブログに書いたタシロラン、今度は別のところで、人に教えてもらったんではなく、自力で見つけた。・・・といっても探し求めて、ではなくたまたまなんだけど。
 車を運転していて横目に入った、車道沿いのスギ林の中の暗がりがどうしても気になって、車を止めた。林の中に入って5mも進まないうちに、目の前に白い植物が。
 スギ林といったけれど、かなりモウソウチクが入り込んでいる薄暗い林。しかも、横は墓所だった。写真に見える通り、ゴミも落ちている。
 が、その中で、ひょろひょろと白い植物が頭をもたげている。

 地下部に共生した菌類から得られる栄養で成長する「菌従属栄養」という生き方をするランの仲間。少し前までは、地面の落ち葉などの分解によって得られた栄養で成長しているので腐生植物とも呼ばれていたが、実際に落ち葉等の分解をしているのは菌類なので菌従属栄養植物との呼び名がふさわしいと思う。

 しかし、以前見たのに比べると、とても小さく、華奢。こことは別にもう一カ所見つけてんだけど、そこもどっちかというと華奢。生育環境によって草体の大きさ等が変わりやすい植物なのだろうか。

2017年7月26日水曜日

閲覧注意 アニサキス

アニサキス Anisakis sp.
(アニサキス科 ANISAKIDAE)

寄生虫とかホント苦手なんだけど、気づいちゃったし・・・
見たくない人は見ないに限る。

先日、魚の卵を買ってきた。シイラの卵。煮付けようと思って。割引で安かったし。

 で、ふと気づくとパックの中で何か動いている。大体、こんなのって嫌いな人ほど気づくんだよね。

 右上と中央下と、あと写ってるとは言いがたいけどまん中にも・・・
 
 この下、拡大写真ですよ〜。見たくない人見ないでね〜(棒)







 こうして見ると、整った形だし、やや白色がかり、透明で綺麗なもんだねぇ。



 怖い怖いといわれるアニサキス。いったいどんな生き物なのか、ということでいくつかリンク。備忘録的な?

①アニサキスの生活環=どんな一生、世代交代をしているか、について(いずれもPDFファイルが開きます)
アニサキス症(概要)|内閣府食品安全委員会
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/factsheets_anisakidae.pdf
アニサキス斜線虫の 生物学と 人体感染の予防|避けますセンター
http://salmon.fra.affrc.go.jp/kankobutu/tech_repo/fe02/fishandegg156_p52-70.pdf

アニサキスの幼生は、オキアミ(中間宿主)に寄生しており、そのオキアミを食べたクジラやイルカ等の海棲哺乳類(終宿主)に寄生し成長する。成長したアニサキスが生んだ卵は海棲哺乳類の排泄物に混じって海にばらまかれ、再びオキアミに取り込まれ寄生する、という流れの様だ。

このオキアミーー>海棲哺乳類の流れの他に、オキアミーー>魚やイカーー>海棲哺乳類という流れもあり、この場合のアニサキスを取り込んだ魚やイカを人が食べることで、人の体内に入る可能性がある、ということらしい。

②アニサキスを体に取り込んじゃうとどうなるの。
アニサキス症とは|国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html


魚介類の生食後数時間して,激しい上腹部痛,悪心,嘔吐をもって発症するのが胃アニサキス症の特徴
虫体が腸に穿入する腸アニサキス症では,腹痛,悪心,嘔吐などの症状が見られ,時に腸閉塞や腸穿孔を併発する.
だそうな、つらそうだ。やだな。アレルギーになることもあるらしい。しかし、ヒトは本来の宿主ではないので、本格的に寄生されることはないみたい。

③予防はどうすんの。
アニサキスによる食中毒を予防しましょう|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html

「鮮度徹底、目視確認、冷凍加熱で予防」と書いてある。
よく読むと細かに書いてあるが、一般家庭できっちりできるのは「加熱」では?
ということで、今回買った卵も煮付けて食べた。




ごちそうさま。

2017年7月19日水曜日

イシガメ

ニホンイシガメ Mauremys japonica (Temminck & Schlegel,1835)
(イシガメ科 GEOEMYDIDAE)

 溜池付近を歩いていたら、足下とで何かがゴソッと・・・
お、カメか。甲羅の一部だけしか見えんなぁ。ミシシッピアカミミガメかな?最近、水辺でカメを見ると、ほとんどがミシシッピアカミミガメだしな。顔の横に赤い彩りのあるやつ。ミシシッピアカミミガメは、こちらもその名から分かるように外来生物。主にペットとしての用途のために日本に持ち込まれたそうだ。

 確認したいからちょっとだけ出てきてねぇ、と引っ張り出したら、おおお!ニホンイシガメ。名前に「ニホン」と付くように、在来のカメ。写真を撮影しようとじっとしてたら、ようやく歩き出して、顔を写真に収められた。
 顔の横に赤い模様はなく、甲羅は中心部が盛り上がり、後の方は大きなギザギザになっている。

 では、腹側も撮らせてな。ごめんよ。
 おお、黒い。

 このニホンイシガメを見かけた附近では、最近アライグマ(やはり外来生物)が入ってきているそうな。雑食性のアライグマは、水辺にすみ、カメ等の爬虫類も餌にしてしまうらしい。
 ミシシッピアカミミガメとは生育環境で競争関係にあり、アライグマには餌にされる、なかなかシビアな環境にくらすニホンイシガメ。写真を撮ったあとは池にお帰り頂いた。達者でくらせよ。








2017年7月16日日曜日

ハンゲショウ

ハンゲショウ Saururus chinensis (Lour.) Baill.
(ドクダミ科 SAURURACEAE)

 ハンゲショウの名前は、日本の暦で半夏生(はんげしょう)の頃に花が咲くことからきたらしい。さらに、この暦の半夏生は、植物の半夏(はんげ=カラスビシャク)が生える頃という説があるそうだ。植物--->暦--->植物と、ループしてる感じが面白い。なお、この半夏生は農事にとっては大切な節だったらしく、この頃までに田植えを終わらせるとされていたそうで、現在の7月2日ごろ(年によって変わる)だそうな。

 たぶんその頃だったと思うが、ため池を散策していたら、岸辺の一角に背の高い植物が群生しているのに気がついた。ちょうど花期で、この頃だけ花序のすぐ下の葉が白くなるので、遠目からでもよういにハンゲショウだと見分けがつく。


 葉の根元の方から白くなっていて、上の方の葉がより白い。こんなに白くなってしまっては、植物の大事な機能の光合成がほとんどされていないだろうな。


 しかし、見ているとたくさんの昆虫類が花を訪れている。多数の花が集った花序とは言え花自体は小さく目立たない代わりに、下の葉が白くなって目立たせて、昆虫に知らせているのかもしれない。水辺であることもあり、トンボの類いも多かった。狩り場になっているのかも。

 ハンゲショウが生えるため池や湿地等は、開発されたり護岸されたりでどんどん減ってきているようだ。そのためか、日本各地のレッドデータブックなどで様々なランクに選定されている。見つけたら大事にしたいものだ。

ハンゲショウのレッドデータブック全国マップ
http://www.kurosan.sakura.ne.jp/RDB/map/sp-5/5/5553.htm






2017年7月12日水曜日

何の巣?

先日、モウセンゴケの写真を撮りに行ったとき、偶然見つけた。
小さな崖地の上から垂れる植物の根に泥で作った巣?子育てのための何か?
穴が空いてるのは出て行ったあと?



2017年7月9日日曜日

モウセンゴケ

モウセンゴケ Drosera rotundifolia L.
(モウセンゴケ科 DROSERACEAE)

 仕事でちょっと写真が必要になり、休みに撮影に行ってきた。仕事に必要なものを休みに撮りに行くとかどうよ、とか。
 雨が降ったりやんだり、晴れ間がのぞくかと思えば、雷が鳴るせわしない天気の中、長靴でボテボテ歩いて行った。
 目当てはこれこれ、食虫植物。最近ホームセンターとかでいろいろなタイプの食虫植物が売られているけど、日本にも分布してるんですよ。
 

 葉に毛が生えていて、その先に粘液の玉がついている。このネバネバでむしをくっ付けて捕まえるらしい。
 この赤いつぶつぶが粘液の玉。ただ、長く続く雨のせいか、ネバネバが機能していないのか粘つきが弱くなっているのか、アリが平気で葉の上を歩き回っている。


 とは言え、よく見ると何か葉にひっついている。アリの腹部っぽいなぁ。

 六月は花の時期。小さな花が咲いていた。




 

アシナガバチの巣

アシナガバチの仲間 Polistinae sp.(スズメバチ科 VESPIDAE)の巣


 梅雨に入るちょっと前、ベランダの屋根にアシナガバチの仲間が巣を作り始めた。細かい種類は分からん。巣を作り始めた場所が普段洗濯物を干すところだし、あまりにも人の行動範囲に近いので、申し訳ないが落とさせてもらった。まだ女王蜂一匹だったので、不在になった頃合いにバシッと。戻ってきた女王蜂は、かなりの時間、巣をかけてた場所の周辺を探しまわっていた。いや、申し訳ない。あと少しだけ、人の行動圏から離れたところにして下さい。
 さて、マジマジと見てみると、本当に六角形を組み合わせた形なのな。ハニカム構造というやつか。こんな形をハチが黙々と作るのってすごいな。中をよく見ると卵が。


 おー、これが働き蜂になるはずだったのか。この卵たちが成虫になる前に駆除できて良かったわ。

 話は変わって、近頃のヒアリ騒動に関わるネットやツイッターを眺めていて、気になったことが。アリについての相談で、
「迷って家に入ってきたアリはそっと家の外に返していますが、集団で入ってきたアリはどうしたらよいでしょう。多すぎて外に返しこなせません」
といった感じのものがあった。
 個人的には、ここで紹介したアシナガバチも、話題になっているアリも、庭にいるのまで完全に駆除するのは行き過ぎな気がしますが、家の中に侵入した場合は駆除していいと思う。家って人が安全に暮らすための空間ですし。まあ、安全に共存できるスキルのある方は別ですが。
 また、この「迷って家に入ってきたアリ」って、迷ったんじゃなくて餌を求めて探索しているアリだと思うんですよね。外に出したところでまた入ってくるだろうし、もし餌の情報を持っていたら巣の仲間におしえて、今度は行列で来るような気がする。これではただのイタチごっこになりかねない。
 相談してる人はおそらく生き物を殺したくないのでしょうから、それなら、最初の一匹を家に入れない方策を立てたほうがより良いと思う。アリの忌避剤とかあるのかな。


2017年7月4日火曜日

イヌビワオナガコバチ

イヌビワオナガコバチ Sycoscapter inubiwae
イチジクコバチ科 AGAONIDAE

 イヌビワオナガコバチと言う名前からも。イヌビワという植物と関わりのある昆虫の仲間だが、イヌビワという植物を知らない人も多いかも知れない。何の仲間かと言われれば果物のイチジク(無花果)の仲間。なので、イチジクと同じように丸っこい滴型の袋の中に花がつく。

 こんな構造の花で、どのようにして花粉を運び、果実をつけるのか不思議なところだが、そこに関係しているのがイチジクコバチ科の昆虫達。その辺の詳しいところは、JT生命史研究館(https://www.brh.co.jpが公開している以下のページに詳しい。


 このイヌビワの送粉を担うイヌビワコバチを見てみたいと、附近のイヌビワを見てみた。私の住んでる地域では、イヌビワはいたるところにある。手頃な低山にはいっても、ちょっとした林にはいっても、林内の低木層を形成しており、当たり前のように見ることができる。道端や駐車場のわきなんかにも生えている。鳥が実を食べてタネを運ぶんだろうな。

 で、意外にあっさり見つけた。
 って、あれ?なんか違くね?

 なんか尾が長いよね。拡大してみよう(画像を切り出しただけだけど)。



 これ、産卵管だね。ちょっと調べてみたらイヌビワオナガコバチというらしい。「オナガ」は「尾長」かな?産卵管が長いと。

 イヌビワオナガコバチは、イヌビワの送粉コバチであるイヌビワコバチに寄生する寄生コバチのようだ。おお、寄生するのか。

 イチジク属植物とイチジクコバチの関係については、いろんな人が調べているようで、なかなかに面白い。