2013年11月1日金曜日

オニバス

オニバス Euryale ferox Salisb.
(スイレン科 NYMPHAEACEAE)
開花中のオニバス
 10年以上前の写真が出て来た。開花中のオニバス。大きな葉をつけ、全体トゲに覆われているのでこんな名なのだろう。
 名前に“おに”とかついて厳つい感じだが、冬にはかれてしまう一年草。毎年水中に落ちた種が発芽し、花を咲かせ、種子を作るというサイクルが回っている。種子は休眠性がたかく、何年も水底の泥の中で眠り続けた後、発芽することもあるらしい。しかし、そうであっても、毎年のサイクルが繰り返され、水底に発芽予備軍となる種子が供給され続けないと、生き残っていくのは難しいのだろう。

 このオニバスをずーっと観察されている方に最近お会いして、このオニバスの話題が出た。ここ数年発生しておらず、ほぼ絶滅したと見られるとのことだった。水底の発芽予備軍の種子がなくなってしまったのか、未だ眠り続けている種子があるのか・・・後者であることを祈っている。

アオウキクサ

アオウキクサ Lemna aoukikusa Beppu et Murata
(ウキクサ科 LEMNACEAE)
水面を覆うアオウキクサ
これで立派な大人の植物と言うのが面白い。しかも花を咲かせてタネを作る種子植物。
最近、植物園でウキクサの仲間の花が咲いたと言うニュースがあった。
肉眼で見えませんが…世界最小の花咲いた 茨城の植物園(朝日新聞)

ウキクサの仲間の葉を食べて育つゾウムシもいるらしいのでそちらも見てみたい。


クロテンツキ

クロテンツキ Fimbristylis diphylloides Makino
(カヤツリグサ科 CYPERACEAE)
クロテンツキの花
 更新しようと思いつつなかなかしなくて、いつの間にかブログ用の画像でデスクトップが埋まっていたので、ようやく重い腰を・・・

 秋と言えばテンツキ〜って、もう時期すぎかけてるけど。テンツキの名は、高く天を突くように伸びるから「天突き」だとか、写真のようにたまご型〜円形の花の集まりが点々と着くから「点着き」だとか説があるもよう。

 こいつらは、草全体より果実を見る方が面白いと思う。でもルーペ必須。悩ましいところ・・・

2013年8月16日金曜日

キアゲハ

キアゲハ Papilio machaon Linnaeus, 1758
(アゲハチョウ科 PAPILIONIDAE)
ミツバにつかまるキアゲハの5齢幼虫
 吸い物の薬味にでもなればと山でミツバを掘ってきた庭に植えた。しばらくして見るとミツバは丸坊主、花も食われてる。食べた主を捜すと、まぁ立派なイモムシさんが・・・

 キアゲハの幼虫。ミツバだけでなくセリ科植物を広く食草としている。先日は、耕作されずに水がたまった水田に生えてたセリについていた。同じセリ科のニンジンやパセリも食べるそうなので、農家さんにとっては嫌なチョウかも。以前、庭に植えてたパセリも丸坊主にされて枯れた。その時は食べた主はとうにどっかに行ってしまってたけど、やはりキアゲハだったんだろうな。

 しばらくしたらさなぎになってて、その後無事に羽化した。
羽化後、羽の展開を持つキアゲハ成虫。
残念ながら羽化の瞬間は見れず。羽化しそうな頃合いは毎日確認してたんだけど、ある日の朝、見てみたらもうこの状態。早い時間に羽化したみたい。

2013年8月5日月曜日

ウルシ

ウルシ
Toxicodendron vernicifluum (Stokes) F.A.Barkley
(ウルシ科 ANACARDIACEAE)
ウルシの葉と実。熊本県宇城市豊野で撮影。
 植物の葉というものもいろいろ形がある。桜餅を包む桜の葉のように、ぴら〜んとしたあれで一枚の葉の時もあれば、上の写真のようにたくさんの葉が集まっているように見えてそれが一枚の葉である時もある。前者を単葉(たんよう)といい、後者を複葉(ふくよう)という。身近な環境、例えば平地や低山で見られる樹木のうち、写真のように小さな葉が鳥の羽状に並んで一つの葉になっている羽状複葉(うじょうふくよう)の葉を持つものは、ウルシの仲間であることが多いので、かぶれやすい人は注意した方がよい。例えばハゼとかヤマハゼとか。
 さて、写真の木、見つけた時は、ヤマウルシ Toxicodendron trichocarpum (Miq.) Kuntze かなぁ、と思って見上げていたんだけど、実の表面がツルンとしてて、毛がない。となるとウルシだなぁ・・・と。ウルシは中国辺りの原産で、日本には自生していない。基本的に漆塗りの行われる地域で栽培されている樹木と考えて良いようだ。
 ただ、熊本県では漆塗りの工芸品、いわゆる漆器ってほとんど聞かない。ただ、それでも調べてみると熊本県にも漆器はあったようだ。それは、私たちが漆器と聞いて想像するような芸術的なものではなく、あくまでも生活道具として使われた質素で丈夫なものだったようである。
熊本市南区の富合公民館内の郷土資料展示室収蔵の「榎津塗」
 現在の八代市東陽町の川俣と呼ばれるあたりで生活道具としての漆器が生産されていて、そこから周辺地域に広がっていったらしい。写真は、熊本市南区の富合公民館内にある郷土資料展示室に展示されている「榎津塗」。これも、そういった地域の人々の生活道具としての漆器生産の一つだったのだろう。私なんかは真っ黒で金で花や鳥の蒔絵があるようなものを漆器と思っていたのだが、これは木目を生かすような透明感のある塗りで、蒔絵なんて施されていない。
 写真のウルシは、かつて漆器を塗るための漆を集めるために植えられていた木の子供ではないだろうか。漆は幹の直径が30cmほどにもなるらしいが、この木は私の手首ほどの太さしかない若い木だった。大きく育ってほしいと思うのだが、かぶれやすい人はいやだろうな・・・

2013年6月1日土曜日

ヒメウラジロ

ヒメウラジロ
Cheilanthes argentea (S.G.Gmel.) Kunze
(ホウライシダ科 ADIANTACEAE)

ヒメウラジロ
 シダの調査・観察に連れて行ってもらって教えてもらった。ヒメウラジロというシダ植物。最初見たとき、なんだかウサギっぽいな、と感じたけど、なぜだろう。

ヒメウラジロの葉の裏。白い。
 葉をひっくり返してみるとこの通り、まっ白。でも、お正月飾りのウラジロ(ウラジロ科)とは異なるグループで、ようは葉の裏が白いから似たような名前になったと。

 減りつつある植物の一つで環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧II類に選定されている。私のいる熊本県では、「要注目種」ということになっている。

 要注目種とは「現在必ずしも絶滅危惧のカテゴリーに属しないが、存続基盤が今後変化および減少することにより、容易に絶滅危惧に移行し得る可能性が高い種」だそうな。

 ここに上げている写真の生育場所は、道路を通すために切り開いて出来た斜面(法面)に、崩落防止のためにコンクリートを打って、金網を張った場所なんですね。コンクリートのヒビや隙間、くぼみに土がたまった所に生えています。日当りのよい崖や岩に生え、乾燥にも強い植物出そうなので、こんな場所にも生えてくるんだろう。たくましいといえばたくましいけどねぇ。

 こんな場所は、崩落の危険が高まったり、道路拡張なんかがあると、あっさり壊されてしまう。主な生育地が、こんな人の手が入るようなところばかりだったら、「存続基盤が今後変化および減少する」可能性が高くなるのもうなずける。観察会なんかで、希少性という切り口だけでなく、自然との関わり方を考えるきっかけとして紹介することもありだな。

 ただ、園芸目的の採集なんかもあるようで、ちょっと注意も必要だな。

 スマホのカメラなんでいまいち写真がよくない。申し訳ない・・・ 

2013年2月11日月曜日

クロヘリアメフラシ

クロヘリアメフラシ
Aplysia parvula Guilding in Morch, 1863

クロヘリアメフラシ。2013年天草にて。

暦の上では春とはいえ、まだまだ寒い中、海へ行ってきた。ワカメ取りに・・・まだちょっと早かったね〜。その上、潮をテキトーに読んできてたので、あまり引かずワカメのところまで行けなかった・・・一応、大潮の干潮言ったんだけどね。

ということで、磯遊びになってしまったのだが、そこで長男が見つけてきたもの。アメフラシだけど、なんか違う。手のひらに収まるくらいに小さく、全体に赤っぽくて模様が少ない、つついたときにだす紫の汁もやや赤っぽいかなぁ?

よくわかんないので、ネットを徘徊して絵合わせ。おそらく、クロヘリアメフラシ。
(参考先)
ウミウシ図鑑.com
http://www.umiushi-zukan.com/main/top.php
 クロヘリアメフラシのページ

千葉の県立博物館デジタルミュージアム
http://www.chiba-muse.or.jp/DM/index.php
 クロヘリアメフラシのページ

軟体動物門というグループなので、大ざっぱに言えば貝やタコ・イカの仲間。さらに、この軟体動物門の中では腹足綱というグループに入るので、巻き貝(サザエとかタニシとかカタツムリとか)に近い仲間。でも、アメフラシの仲間の貝殻は、小さく退化して隠れてしまっている。背中を押すと、コリコリッと貝殻の感触がある。写真は、波の加減でうまく背中の貝殻が現れたところ。

写真を見て気づいたけど、尾(右下の端)はどうしたのかな?怪我?現地で気付けばよく見たんだけどな・・・

アメフラシって意外と種類があるのね。知らなかった。

2012年11月17日土曜日

ホソバヒメミソハギ

ホソバヒメミソハギ
Ammannia coccinea Rottb.
(ミソハギ科 LYTHRACEAE)
水田に入り込むホソバヒメミソハギ
水田が赤く染まっていた。赤米を植え付けたにしては不規則に植わっているなと思ったので近づいてみると、稲の間から赤く紅葉した草がたくさん生えていた。赤い草は水田に入り込んだ雑草だった。

全体真っ赤になったホソバヒメミソハギ。
ホソバヒメミソハギ。熱帯アメリカが原産で、今や世界中に帰化しているらしい。かなり鮮やかな赤色に紅葉している。もう花は終わって結実しているようだ。結実期になると赤く染まるのだろうか。

ほかの田んぼでは、まだ花がさいているものを見つけた。
開花しているホソバヒメミソハギ。
こちらはまだ緑色。葉は根元が横に広がった細い矛のような形で、二枚の葉が茎をはさんで向かい合うようについている。葉の出る方向が、上下の葉で90度ずつずれてるので、はが互い違いに出ているように見える。この規則性はなかなか美しい。花はやや薄い紫色の花びらを4枚つけてかわいらしい。

2012年11月13日火曜日

ツリフネソウ

ツリフネソウ
Impatiens textorii Miq.
(ツリフネソウ科 BALSAMINACEAE)

道端に咲くツリフネソウ
車を運転している時に目の端に赤紫の花を捉えた。車を止めて近づくとツリフネソウだった。うーん、うれしいねぇ。なんとなく。

正面から見たツリフネソウの花。意外に間抜け。
ツリフネソウの名は、船のような形の花をつり下げたように咲かせるからか。正面から見ると意外に間抜け顔・・・ちょっとかわいそうか。

小学校なんかで植えるホウセンカやホームセンターの園芸コーナーなんかで見かけるインパチェンスは、このツリフネソウの仲間。

ツリフネソウについて調べてたら、分かりやすいページを発見。
なかなかの植物ルーム ツリフネソウの花のつくり
このページによると、ツリフネソウの花には、主に花粉をつばす雄性期と、くわえてめしべが受粉できるようになる両性期があるそうだ。この写真は緑色のめしべが見えてきているので両性期に入っているかな?

ページの主、なかなかさんはこういった花の構造や仕組みを、キチっ、キチっと確認されるのですごいなぁといつも関心。私は相当、必要に迫られないとしないので、見習わなければな、といつも思う。思うだけじゃダメだけど・・・

2012年11月12日月曜日

マメアサガオ

マメアサガオ
Ipomoea lacunosa L.
(ヒルガオ科 CONVOLVULACEAE)
マメアサガオの花
少し前のことだけど、田の畦に小さなアサガオの花がさいていた。直径2cmくらいの白いアサガオ。

マメアサガオ。北アメリカからやってきた外来生物。まっ白のアサガオは目立ってきれい。

2012年11月10日土曜日

ハキダメギク

ハキダメギク
Galinsoga quadriradiata Ruiz et Pav.
<キク科 ASTERACEAE>
踏みしだかれ成長の悪いハキダメギク

足下をふと見ると生長の悪い草が一本。あー踏んじゃった・・・キクの仲間、ハキダメギク。牧野富太郎が掃き溜め(ごみ捨て場、ゴミを掃いて集めておく所)で見つけたことによるらしいけど・・・


ハキダメギクの花のアップ。
白く飛んじゃいました。
キクの仲間なので小さな花が集まってこの花(花序)ができている。キクの仲間の花の花びらは、アサガオの花びらのように根元がひとつに繋がっている合弁花(ごうべんか)といわれる形になっている。

まん中の黄色い部分は、筒状花(つつじょうか)とよばれる花が集まっている。筒状花の花びらはふちがあまり広がらず、筒(つつ)型なのでこう呼ばれる。

ふちに五つある白い花の花びらは、ふちの一カ所だけが舌(した:べろ)のようにのびていてこんなに目立っている。舌状花(ぜつじょうか)とよばれる。

先日この場所に行ったら、よく育ったハキダメギクがわんさか,繁っていた。元気だ。

2012年11月9日金曜日

ブラジルチドメグサ

ブラジルチドメグサ
Hydrocotyle ranunculoides L.f.
(セリ科 APIACEAE)

ブラジルチドメグサがおおう水路
もう稲刈りも終盤かという頃、水路がえらく青々している・・・なにかなぁ〜と思って近づくと、ブラジルチドメグサ。

ちょっと荒いけど、拡大。
直径3〜4cmと結構大きいけど、チドメグサの葉っぱだ.
まるで水面をはうように茎をのばし、節から葉や根を出す。最初にちょっとした足がかりがあればそこから茎をのばして成長し、上の写真のようなマット状の群落を作る。

原産地は南アメリカ、つまり日本においては外来生物。どのようにしてか日本に入り込み生きている。その繁殖力のすごさから特定外来生物に指定されている。

なんと日本で最初に発見されたのは熊本県の菊池川。阿蘇の白川付近の池にもあるらしい。近年、熊本市内の江津湖にもはいり、えらい勢いで増えている。で、この場所は上記のどこでもない、坪井川水系。

最初は菊池川と白川、江津湖は緑川水系、で今回の坪井川水系・・・がんがん広がっとるなぁ・・・

2012年11月6日火曜日

クロシタナシウミウシとその卵嚢

クロシタナシウミウシ
Dendrodoris fumata (Ruppell & Leuckart, 1831)
(クロシタナシウミウシ科 DENDRODORIDIDAE )

クロシナタナシウミウシ(画面下の黒い物体3つ)と
卵嚢(黄色いバラの花状のもの)

またまた季節外れなんだけど、この夏見たクロシナタナシウミウシ(おそらく)。磯の転石をめくったらいた。

成体のほうは黒い色にオレンジ色の縁取り、水につけておくとウミウシ(海牛)の名の通り牛の角のような触覚と、背中にゆらゆらとしたえらを出す。

画面まん中の黄色いものは卵の固まり。バラの花のような感じで渦巻き状に石に引っ付けていた。3体の成体は卵嚢を守っているのか、産んでる途中だったのか・・・

クロシタナシウミウシのシタナシってなんだろう?と調べたら、「舌無し」ということらしい。巻貝などは歯舌というヤスリのような舌をもっている。この舌で海藻などの食べ物を削り取ってたべている。ウミウシはこう見えても貝の仲間で、多くの種はこの歯舌をもっているらしい。しかし、このクロシタナシウミウシは歯舌を持っていない。そのことから来た名前のようだ。

歯舌といえば、大学生のころ、この歯舌を取り出して観察する実習があった。同級生の女の子が「アサリの歯舌はどんなのかなぁ?」という声を聞いて、私は「アサリは濾過食だから歯舌なんてないよ」とばっさり言い放ち、まわりの人をドン引きさせた嫌な思い出がある。

理学部の学生だったんだから、せめて「ないと思うけど確認しなきゃね、解剖だー!!」くらい言えよ●十年前のおれ・・・

2012年9月24日月曜日

ハマボウ

ハマボウ
Hibiscus hamabo Siebold et Zucc.
(MALVACEAE アオイ科)

青空をバックに、ハマボウの花

デスクトップを整理していたらブログに上げようとして忘れてた画像が・・・夏の写真だ。昨日は水俣で海辺の植物の観察会の仕事だったのだが、そこにも大きなハマボウの木があった。しかし、花は完全に終わっていた。足早に去っていく夏を惜しみつつのアップ。ということでご勘弁。

学名に“Hibiscus”とあるように、南国の花で有名なハイビスカスの仲間。レモン色のハイビスカスは、熊本の蒸し暑い夏をカラっとさわやかにしてくれそう。また、来夏見れることを楽しみに。