2012年3月31日土曜日

ケハダヒザラガイ

ケハダヒザラガイ
Acanthochitona defilippii (Tapparone-Canefri, 1874)
(ケハダヒザラガイ科 ACANTHOCHITONIDAE )


石にはりつくケハダヒザラガイ。貝殻が小さい。


磯の石をはぐって(方言か?めくって、裏返して)いたら、以前紹介したヒザラガイとは様子のちがう多板類がいた。


貝殻はヒザラガイと同じように何枚も連なっているけど、一枚一枚が小さく、丸っこい。ちょっとバランスの崩れた六角形に見える。貝殻に対してまわりのはみ出た肉の割合がおおい。


はみ出た肉のところはなんだか毛っぽくって、だからケハダ(毛肌)ヒザラガイなのだろう。ヒザラガイを見た場所と同じ磯で観察できたが、ヒザラガイに比べるとちょっと少ない印象を受けた。

2012年3月30日金曜日

スガイとカイゴロモ

スガイ
Turbo (Lunella) coreensis (Récluz, 1853)
(サザエ科 TURBINIDAE)


カイゴロモ
Cladophora conchopheria Sakai
(シオグサ科 CLADOPHORACEAE)


みどりの丸いものが、カイゴロモ(藻類)におおわれたスガイ。


 写真には、緑の藻(も)におおわれた丸い貝が8つ写っています。分かるかな?この貝はサザエ科のスガイという、直径2cmくらいの小さな巻貝。岩場の海岸に行くと必ずと言っていいほど見る事ができる。


 熊本では「びな」と呼んでいて、子どもの頃は持って帰って、親に湯がいてもらって食べていた。でも、小さな貝なので、ご飯のおかずというよりは子どものおやつか酒の肴といったところ。


 さて、この貝の表面をおおっている緑の藻は、カイゴロモという海藻。名前の通り、「貝の衣(ころも)」のように貝殻をおおってしまう。しかも、このカイゴロモは、スガイの貝殻にしか生えないという変わり者。磯には同じような巻貝が何種類もいるのに、スガイにしか生えない。こういうのを難しくは「基質特異性」というが、まあいいか。貝殻の表面に「これはスガイだ」と分かる何かがあるのだろうか。


 カイゴロモは、スガイの貝殻にへばりついているのではなく、根(正しくは仮根)を殻に食い込ませている。だからぺりぺりとはげるものでもなく、削り取るのもむずかしい。そこまでして互いに(いや一方的に?)ぴったりひっつくのはなぜだろう?


 スガイは、カイゴロモが生える事で外敵から見つかりにくくなるのかもしれない?カイゴロモは、スガイが動き回ることで他の海藻と競争することなく、いつも日の当たる所にいることができるのかもしれない?何かしら、自然の中を生き残るのに有利なことがあるのだろう。

2012年3月29日木曜日

カゴメノリ

カゴメノリ
Hydroclathrus clathratus (C.Agardh) Howe
(カヤモノリ科 Scytosiphonaceae)

海岸にころがるカゴメノリ

海岸にアミアミしたモノが・・・人工物かとおもいきや、手に取ると・・・生き物だねぇ。海藻の仲間でいっぱい穴が開いているので、籠(カゴ)のようになっている。だから「籠目(かごめ)ノリ」

この場所では直径20cmくらいのものもあったけど、これは小さいやつ。

で、せっかくなので標本にしてみた。広げようとするとけっこうピリピリとやぶける。
カゴメノリの標本。いろんなサイズの穴がある。
籠目というと、規則正しく穴が並んだイメージだけど、これは大小さまざまな穴が開いてる。大きい穴はふちがめくれて太い縁取りのようになっている。

取り立てて食用にはされないようだ。

潮間帯下部に生育するらしいので、干潮時をねらって潮が引いている間際のあたりを探すと見つかるのだろう。

だんだんあたたかくなって、海藻の時期も終わりになるな。今のうちに海に行くか。

2012年3月28日水曜日

ヒザラガイ

ヒザラガイ
Acanthopleura japonica
(クサズリガイ科 CHITONIDAE)


ヒザラガイ。キャタピラー見たいなのが“貝殻”


海で石をひっくり返すとよくみる生き物。ヒザラガイ。貝のなかま。


貝といわれれば、アサリみたいな二枚の貝殻を持つ二枚貝や、サザエのようなグルグルッとした巻貝を思い浮かべるのがふつう。このヒザラガイは二枚貝や巻貝とは少し違った「多板綱」と呼ばれるグループで、8枚の貝殻が前後に少しずつ重なって瓦のようについています。ブルドーザのキャタピラーや回転寿しのコンベアーのようにみえる。


地方によっては食べるところもあるようで、テレビ番組「秘密のケンミンshow」でも鹿児島県の「クンマー」として紹介されていた。一度試してみようとは思いつつ、なかなか試せてないなー


ヒザラガイで調べてみたら、ちょっと面白いなと思ったニュースがナショナルジオグラフィックに出てた。


ヒザラガイの目は鉱物アラゴナイト - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?


アラゴナイトという鉱物を取り込んで目を作っているらしいのだが、アラゴナイトって?
Wikipediaによるとアラレ石らしい。化学的には炭酸カルシウムでできている。これが、どんな感じで目に使われているのだろう?

2012年3月27日火曜日

エリマキツチグリ かなぁ?

エリマキツチグリ
Geastrum triplex (Jungh.) Fisch.
(ヒメツチグリ科 Geastraceae)
かな?
エリマキツチグリかなぁ。
はっきりいって絵合わせなので「かなぁ」のレベルなんだけど。


もう胞子も飛ばし終わってるのかずいぶん痛んでたけど、なんだか、すごくゴムゴムしてる。


生えていた場所はスギの植林にモウソウチクが入り込んだような場所で、落葉樹とかはあんまりなかったような。カゴノキとかクスノキは周囲にあったけど、ポツポツとある程度。


図鑑には「林内の落葉の多い場所に群生」とあるとおり、地面のくぼみの落ち葉がたまったところに、ザラ、ザラ、と「落ちてた」という感じ。「生えてる」感じがあまりなかったのは、少し古いためかな。


一番印象的だったのは、なんだが「ゴムゴム」してたこと。




2012.03.30追記
facebook上で、菌類専門の方から「エリマキツチグリでいいと思う」とのコメントを頂きました。ありがとうございます。

2012年3月26日月曜日

ヒメアザミ

ヒメアザミ
Cirsium buergeri Miq.
(キク科 ASTERACEAE)


ヒメアザミ


アザミの仲間は、調べるの面倒くさそうだなー、とおもって敬遠していたのだが、つい調べてしまった。細く華奢な茎に、壷のような総苞、そこから大きく開く花、すぅーとのびる花柱。なかなかに魅力的。


今シーズンは、アザミの仲間にも取り組める予感・・・

2012年3月25日日曜日

ツクシヤブソテツ

ツクシヤブソテツ
Cyrtomium macrophyllum (Makino) Tagawa var. tukusicola (Tagawa) Tagawa
(オシダ科 DRYOPTERIDACEAE)


ツクシヤブソテツ。写真がちょっとくらいなぁ。
あんまり見かけないヤブソテツだな〜と思いながらしらべてみた。
  • 羽片(小さな葉のような部分)が幅広い
  • 羽片が10対程度と少ない
  • 羽片の根元がくさび形
なので、ツクシヤブソテツだろうな、と。

この仲間は、標本にしやすくってついつい採集してしまって、同じ種類ばかり集まってしまう(とはいえ、いろんな場所、いろんな時なので無意味ではないのだが)。

新しく種類が追加できたのでうれしい。かなり昔に採集記録があったので新産地ではないが、現代の記録ということでちゃんとした施設(といっても職場だけど)に寄贈しよう。

2012年3月24日土曜日

エビネ

エビネ
Calanthe discolor Lindl.
(ラン科 ORCHIDACEAE)


たぶんエビネ。
たぶんふつーのエビネ。思いかけず出会ったので、ちょっと驚いた。


この仲間も山野草ブームだか園芸ブームだかでずいぶん盗掘され、数を減らしたそうだ。一生懸命増やして野生に戻しているグループもあるそうだ。


とりあえず、春が楽しみ。

2012年3月23日金曜日

ハマナツメ

ハマナツメ
Paliurus ramosissimus (Lour.) Poir.
(クロウメモドキ科 RHAMNACEAE)
ハマナツメの葉。たまご型〜ハート形、三つの脈、葉の付け根のトゲ、が特徴。


暖かい地方の海岸に生える植物で、本州、四国、九州、沖縄等に分布する。ドライフルーツのナツメ(干し棗)と同じクロウメモドキ科だけど、食べられるような実はならない。


この植物は意外と少なく、熊本県では絶滅危惧II類に指定されている。
<参考>
改訂・熊本県の保護上重要な野生動植物-レッドデータブックくまもと2009-
http://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/44/rdb2009.html
上のページはpdfが掲載されているだけで、検索がほぼ不可能なので、以下もどうぞ。
植物(維管束)その7 [PDFファイル/501KB] 
http://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/26053.pdf


というのも、この植物は、生える場所は海岸、種も海の水に運ばれる。なので、護岸や堤防どんどんつくられ、自然の海岸がつぎつぎに失われている現在は、生えるところ減り、種が行き着く新天地もなかなか見つからない状態なのである。


海岸の自然も大切にしたいですね。

2012年3月22日木曜日

ニホンザル

ニホンザル
Macaca fuscata (Blyth, 1875)
(オナガザル科 CERCOPITHECIDAE)


ニホンザル。車が結構通る道路沿いでもへっちゃら。
正直、哺乳類は詳しくない。野生のニホンザルも初めてまともに見た。群れでキーキー言いながら行動しているのって、正直怖い、と思った。この前イノシシに遭遇した時もびびった。たぶん、意思疎通できそうでできなさそうな相手が怖いんだな(人間と同じで)。う〜ん、哺乳類の研究には向かないな、自分。


群れの動きや行動パターンをじっくり観察して、何をしているかをよく考え、理解しようとすると、そうそう怖いことはないんだろうけど、動物相手だと感情が先に立っちゃうんだよね〜。科学を学んだ者にあるまじき!って感じだ。


さて、このニホンザルの群れ(写真に写ったもの以外にもいっぱいいた)、道路沿いのワイヤー製のガードレールの上に座って何やらモグモグ。どうやらカナムグラの雌花穂を食べていた様子。カナムグラってビールを造る時にいれるホップに近い仲間で、その雌花穂もホップみたいなゴワゴワモコモコなんだだけど、栄養あるのかな?おいしいのかな?


ニホンザルで思い出したが、以前住んだことのある和歌山県では、ニホンザルと近縁でもともと日本には生息していないタイワンザルが入り込み、交雑をしているという問題を起こしている(いた?)。


ちょっとググっても新しい情報が上がってこないな。今、どうなっているのかな?



2012年3月21日水曜日

ムクロジ

ムクロジ
Sapindus mukorossi Gaertn.
(SAPINDACEAE ムクロジ科)


ムクロジの葉。木が高くてうまく撮影できない。
以前も書いたけど、ムクロジ。黒い種子を羽根つきの羽根の頭にしたり、果肉を石けん代わりやシャボン玉にしたり、と利用される。けど、あんまり多くはない、と以前は書いた。


確かに多くはないけど、どこそこあるなー。けどやっぱり、神社の近くとか、人里近くとかにあって、人が植えたものとか、そこからたまたま種が転がって、というのが多いのかもしれない。


小さな葉が左右に並ぶ「偶数羽状複葉」という形の葉が好きでねぇ。一度バシッと標本作りたいけど、高くて手が届かない・・・


高くて遠いなぁ。

2012年3月20日火曜日

シャシャンボ

シャシャンボ
Vaccinium bracteatum Thunb.
(ERICACEAE ツツジ科)


秋から冬にかけて、低い山で見ることのできるこの木の実、知ってますか?
シャシャンボの実。この木はかなり身近な木。


ちょっとアップ!
実のアップ画像。とは言っても上の画像を拡大しただけですが。
どうです?なんか見たことあるでしょ?何に似てる?


ブルーベリーそっくりでしょ?それもそのはず、ブルーベリーと同じツツジ科スノキ属のシャシャンボという木で、実の形もそっくりです。ただ、小さい。ブルーベリーは大きいものだと直径1cmくらいあるけど、シャシャンボの実は直径6mmくらいかなぁ。


味は?うーん、さすがに栽培されたブルーベリーほど甘くはないけど、“よく熟したものであれば”甘酸っぱい味で、“私的には”おいしい。お年を召した方とお話しすると、「子どもの頃よく食べた」などとおっしゃいます。でも、今時の子どもは「おいしい」と思うのかな?


このシャシャンボは暖かい地方の林に生える木なので、熊本市に住んでいる人にとってはとても身近な木。熊本市周辺の小高い山に行けば見つけることができるのではないでしょうか。ただし、実が鈴なりとは限りませんが。

2012年3月18日日曜日

ツルナ

ツルナ
Tetragonia tetragonoides (Pall.) Kuntze
(AIZOACEAE ツルナ科)


冬のツルナ。枯れてしまいそうです。
私の好きな植物。ツルナ。海岸に行くと必ず探してしまう。季節は冬。葉も黄色くなってしまってる。多年草なので枯れちゃうことはないのだろうけど。


さて、暑い盛りは黄色の花を探すのだけど、花はない。代わりに・・・
ツルナの実。
実がなっていた。ほーこんな実がなるのね。で、何となく実だけ持って帰っていたんだけど、ほったらかしていた。おかげで黒っぽく枯れちゃった。
ツルナの実。直径1cmくらい。意外と軽い。
これ、意外に軽くて、外側はフワフワしている。水には浮く。それをむしると、中にとっても固い部分がある。爪を立ててもわれないし、トゲのようなところもあって痛いのでナイフで切ってみた。
ツルナの果実の断面図。白い部分が種子。
もっと柔らかいうちに切れば良かったかな?なんだかぼろぼろになった。白い部分が種子。いくつも入っているようだ。軽い果実で波に流され、広がって行くのかな。

2012年3月16日金曜日

サイヨウシャジン

サイヨウシャジン
Adenophora triphylla (Thunb.) A.DC. var. triphylla
(CAMPANULACEAE キキョウ科)
サイヨウシャジンの花。五つに分かれた先が緑色できれい。
この植物は、熊本では阿蘇の草原でよく見る。だから、職場の近くでこの花を見つけた時はちょっと驚いた。


釣り鐘型の花から長いおしべが出ている様はなかなか風流。

2012年3月15日木曜日

スミレモ

スミレモ
Trentepohlia aurea
スミレモ科 TRENTEPOHLIACEAE
コンクリート面に生えるスミレモ


観察会のルートで参加者が変な生き物を見つけた。コンクリートの面に生えている赤茶色というか鉄さび色のふわふわしたもの。コケでもない、カビでもない・・・と話して、その時は分からずじまいだった・・・


スミレモ拡大図。レンズが汚れてて、まん中がボケています・・・すみません。
これはスミレモといって、「も(藻)」のなかま。藻は、マリモとか、アオミドロとか、クンショウモとか、ワカメとか、いずれも水の中の生き物。でも、このスミレモは、地面に垂直に立ったコンクリートの面についてる・・・このような水から出て生活している藻の仲間を「気生藻」というそうだ。


緑色植物門という、その名の通り緑色の植物のグループに入るのだが、前述のように赤さび色をしている。これはヘマトクロームという赤色の色素を持っているため。


なんだか、頑張ってる感じがいい!!