2014年10月4日土曜日

イボタガの幼虫

イボタガ Brahmaea japonica Butler, 1873
(イボタガ科 BRAHMAEIDAE)
の幼虫

イボタガの幼虫。黒いひげのような飾りがあり終齢ではない。
初夏くらいだったか、観察会の途中、立ち止まったときに何かの幼虫に気がついた。ぱんぱんに張ってツヤのある緑色の体に、黒くて長い刺というかひげのようなものがある。

 調べてみるとイボタガの幼虫のようだ。イボタガの名前は「イボタノキ(モクセイ科)の植物を食べる蛾」という意味のようだ。幼虫の食草は、イボタノキをはじめとするモクセイ科の樹木の葉。
 写真の幼虫が取り付いている木の枝は、ネズミモチ Ligustrum japonicum Thunb.というやはりモクセイ科の植物なので、この気を食べているのかも。しかし、この時はじっとしていて、食べている気配はなかった。

 この髭が特徴的で、始めはギョッとして、見慣れてくるとカッコいい、な感じなんですが、終齢幼虫(さなぎになる一歩手前の幼虫)になるとこの髭はなくなるそうだ。なんともったいない・・・

 さて、この幼虫が大人になった姿を実は知らないのだが、調べてみると何ともすごい模様の蛾らしい。これは実物を見てみたいものだ。出現する時期は春の早い時期らしい。やはり夜に灯りのあるところを探せば良いのだろうか?

2014年10月3日金曜日

ホウライチクの花

ホウライチク Bambusa multiplex (Lour.) Raeusch. ex Schult. et Schult.f.
(イネ科 POACEAE)

ホウライチクの花。雄しべの葯(茶色の棒状のもの)がよく見える。
 以前紹介したホウライチク。少し前の観察会の時、開花しているのに気が付いた。

 ホウライチクは地下茎がほとんど伸びず株立ちになる竹のなかまで、一般的なモウソウチクやマダケのように、地下茎をどんどんのばして広く広がることがない。その性質を利用して、土地の区切り(所有者の違いや、利用の仕方の違い)のところに植えて目印にしていた、という話を聞いたことがある。

 竹の花はなかなか咲かない、咲いたら枯れる、などと言われることが多い。ホウライチクはどうなのだろう?今まで何度かホウライチクの開花を見たことはあるが、その後追跡して観察した覚えはない・・・

2014年9月30日火曜日

エダナナフシ

エダナナフシ Phraortes illepidus (Brunner von Wattenwyl, 1907)
(ナナフシ科)

エダナナフシか?

 植物の観察会の途中で気づいた虫。細い草の茎のような細長い体で、羽もない。まわりの草の色と同じような緑色で、ほとんど動かないか、動いてもとってもゆっくり。まわりの草に化けて身を守る「擬態(ぎたい)」をしているのだろう。たぶん鳥やカマキリなどの捕食者に見つからないようにしているようだ。

 このような体形の昆虫をみつけると簡単に「ナナフシ!」と言ってしまうが、ブログに載せるため写真を良く見てみると、触覚がとても長い、腹部の先(七節目)がちょっと出っ張っている、等の特徴がある。どうやらエダナナフシという種類のようだ。

 草食でとても柔らかい体をしている。敵に襲われたり、なにか物理的な衝撃を受けると脚や触覚が切れてしまうこともあるらしい。そして、切れた脚や触覚はまた再生するようだが、この再生について面白い現象があるらしい(以下のリンク参照)。

Experiment ナナフシ -この愛すべき奇妙な昆虫-(生命史研究館)

 このナナフシの仲間は、メスばかりが多く見られ、オスがほとんど見当たらないということが多いらしい。オスとの交尾を必要とせず、メスだけで卵を産み、増えていくようだ。

 以前、職場の子が捕まえてきたナナフシの仲間は、大事に飼育していたら草の実のような卵をたくさん産んだのでメスだと分かった。その卵からたくさん孵ったが、飼育しきれないのでもとの場所に放してしまった。

2014年9月2日火曜日

ツルコウゾの実

ツルコウゾ Broussonetia kaempferi Siebold
(クワ科 MORACEAE)
ツルコウゾの実
 またもや季節外れで申し訳ないが、6月頃だったか、ツルコウゾがたくさん実をつけているのを見た。赤というか濃いオレンジ色に熟していた。雨上がりで濡れていて少しためらったが、一つ口に入れてみた。甘くておいしいが、舌触りがなんだか「ネトッ」とした感じで、そこがあまり好みではなかった。

 ツルコウゾという名前のとおりつる状の植物で、他の植物に取り付きどんどん上に伸びていく。ツルコウゾの「コウゾ」は、和紙の原料となる「楮」のことで、分類上も楮(コウゾ Broussonetia kazinoki Siebold × B. papyrifera (L.) L'Hér. ex Vent.)と近い仲間である。コウゾに比べると細長い葉をしている。

 雌雄異株なので、写真のものはメスの花をつける雌株と言うことになる。この植物は、実は温かい地方の植物らしく、九州と四国の西部や本州の一部にしかないらしい。熊本では結構簡単に見ることができる。




2014年9月1日月曜日

アカメガシワ

アカメガシワ Mallotus japonicus (L.f.) Müll.Arg.
(トウダイグサ科 EUPHORBIACEAE)

 先日道端のアカメガシワの実が熟して、黒いタネをのぞかせていた。それを見てアカメガシワの雄と雌を紹介しようと写真を準備していたのを思い出した。シーズンのがしちゃったけど、来年確認して下さいね。

雄株の花序。花粉を集めに蜂がよってきている。
 アカメガシワはかなり身近な植物で、図鑑なんかには「山野に普通にある」と書いてあるが、熊本ではそれこそ道端や空き地でも見れる。名前は「赤芽がしわ」で、新芽が赤い事からきている。「ガシワ」は、食べ物を載せる葉っぱをしめす「かしわ」が濁ったのだろう。昔はこの丸く大きな葉に食べ物を載せたりしたのだろうか。

 小学校の教材で出てくるアブラナの花では、一つの花の中に雄しべと雌しべがあり、植物一本一本に性別あるとは習わないようだ。しかし、植物の性は多様で、雄しべと雌しべがそろった花(両性花)をつける種類もあれば、雄しべだけあるいは雌しべだけの花(単性花)をつけるものもある。また、一本の植物にオスの単性花(雄花)とメスの単性花(雌花)の両方をつけるもの(雌雄同株)もあれば、片方しかつけないもの(雌雄異株)もある。
 さて、このアカメガシワは、木一本毎に雄花だけをつけるオスの木と、雌花だけをつけるメスの木がある(つまり雌雄異株)。一枚目の写真は、オスの木の枝先についた雄花の集まり。蜂がよってきている事から虫に花粉を運んでもらう虫媒花のようだが、あんまり派手な装飾はない。次はメスの花。

アカメガシワの雌花序

こちらも派手な装飾はないが、なんだか目立つなぁ。ところどころに見える赤いものが雌しべ。随分まんまるだけど、これはもう実が随分と成熟してきていて、花としては終わりかけだから。

 木の花は、目立たないものもあるけど、よく見てみるといろんな形で面白い。

ハス

ハス Nelumbo nucifera Gaertn. 
(ハス科 NELUMNBONACEAE)

蓮の花
 仕事でよく訪れる場所の近くに「ジュンサイの池」という池がある。水面の半分はヒシ、半分はハスで覆われている。今年はハスが開花し始めた時に訪れることができた。
蓮の花
 かなり大きな花。写真撮ったら結構白く飛んでしまった。スマホの限界か。

 さて、この「ジュンサイの池」、その名の通り、以前はジュンサイが生えていたそうだ。職場には標本も残っている。この池の隣にはゲートボール場や駐車場が隣接しているが、以前はそこも池だったそうだ。半分ほどを埋め立ててしまったらしい。そういった地形の変化や水の利用の変化などで環境が変化して、ジュンサイは生えなくなったのかもしれない。池の底をかき混ぜると埋土種子が発芽するんじゃないか、とも思うが・・・


2014年8月9日土曜日

コマツヨイグサ

コマツヨイグサ Oenothera laciniata Hill
(アカバナ科 ONAGRACEAE)

駐車場に咲いていたコマツヨイグサ
夜帰宅したら、砂利敷きの駐車場に黄色い花がたくさん咲いているのに気がついた。マツヨイグサの仲間だ。


 マツヨイグサは漢字で書くと「待宵草」。宵(よい)とは日暮れから夜中あたりまでの頃合いの事で、今では「夜」と言ってしまう時間帯。今では「夜」の一言ですます時間帯も、昔は細かくわけていいわけていたんだなぁ・・・と話がそれた。つまりは夜を待つ草ということ何だけど、これは花の咲く時間帯からきたのだろうな。

 マツヨイグサの仲間は、よる日が暮れ出すと、蛍光色とも言えるような独特の黄色い花を咲かせる。夜に咲くので、夜に活動する動物を誘い、花粉を運んでもらうのだろう。ガの仲間かな。花の根元がかなり細く長いので、長い吻(ストローのような口)を持った種類が蜜を吸いにくるのかな?

 さて、このコマツヨイグサはマツヨイグサの仲間の中では割と見分けやすい。ほとんどのマツヨイグサは、茎が縦にのびた背の高い草だが、コマツヨイグサは地面を這う。そして葉の縁が大きく、不規則にギザギザしている。

 コマツヨイグサは、他のマツヨイグサの仲間と同様に外来の生物。コマツヨイグサは北アメリカ原産といわれている。図鑑などを見てみると河川敷などの砂地のような環境を好むようなので、砂利敷きの駐車場に生えていたのも納得できる。

 せっかくなので、月明かり+街灯の明かりで撮影してみた。がスマホではやはり限界か・・・デジカメ買わんとなぁ・・・
暗がりに咲くマツヨイグサ

2014年4月24日木曜日

ネコノチチ

ネコノチチ Rhamnella franguloides (Maxim.) Weberb.
(クロウメモドキ科 RHAMNACEAE)

道路脇に生えてたネコノチチ

 山裾の道沿いを歩いていたら、目の端に見慣れない植物を捉えた。とっても珍しいというわけではないんだけど、山に行きさえすれば必ずあるというほど普通な植物ではない。名前はネコノチチ。この植物の特徴の一つが葉序、つまり枝に葉がつく順序、並び方。葉が枝にどのようにつくか、というのは植物によって様々だが、代表的なのものに互生と対生がある。互生は、枝に葉が右、左、右、左と交互に付く。対生では枝の一カ所から左右に1枚ずつ、計2枚が対になって付く。
ネコノチチが示すコクサギ型葉序。
 しかし、ネコノチチは上の写真のように、右、右、左、左と片方に2枚ずつ付く。これをコクサギ型葉序という。コクサギ型葉序、というくらいだからコクサギも同じようなつき方をする。

 花はどんな感じかというと、こんな感じ。あんまり目立つ花ではない。葉の根元にいくつかまとまってつく。
ネコノチチの花。
 花の中心にあるのがめしべで、そのまわりの五つがおしべ。写真では分かりにくいが、おしべは小さな花弁で縦にくるっと巻かれている。花が咲くのが6月頃、そして八月頃には実がなる。
ネコノチチの果実。まだ黄色
 この果実の形が、ネコノチチの名前の由来だそうな。ネコノチチは「猫の乳」つまり、猫の乳頭に似てるのと。そういわれても猫のおっぱいをマジマジと見たことない・・・この果実、写真では黄色だが、時間が経つと赤、黒と変化しながら熟す。その変化は果実によってまちまちなので、時には同じ枝で三色の入り交じったカラフルな状態となる。これは結構目立つので、実は鳥などを呼び寄せているのでは?などと想像したりして・・・





2014年4月21日月曜日

フリーデルマイマイ

フリーデルマイマイ Aegista friedeliana friedeliana
(オナジマイマイ科 BRADYBAENIDAE)

フリーデルマイマイ、だと思う。
 なんかけもけもしたカタツムリ。たぶんフリーデルマイマイだと思う。普通種らしいが初めて見た。カタツムリといえばこの辺りではツクシマイマイかコベソマイマイかウスカワマイマイかみたいな感じなので、ちょっと山がちなところを歩くだけで見たことない種類がいるのは新鮮で驚きだった。

ニクウスバタケ

ニクウスバタケ Coriolus brevis (Berk.) Aoshima
(多孔菌科 POLYPORACEAE)

木材からでるニクウスバタケ
ニクウスバタケ、と教えてもらった。オレンジ色と縁の白色が美しくて気になった。本などを見るともっとたくさんが群生するものらしいが、これはやや控えめか。これからもっと増えるのだろうか?

 ナラ、カシ、シイなどのいわゆるドングリの木の枯れ木や切り株に生える、極普通のキノコだそうだ。この辺りから覚えていくと、少しはキノコのことも覚えていけるかも・・・

キドイノモトソウ

キドイノモトソウ Pteris kidoi Sa.Kurata
(イノモトソウ科 PTERIDACEAE)

キドイノモトソウ。青い矢印は胞子をつける胞子葉、白い矢印は胞子をつけない栄養葉。
 キドイノモトソウというのを教えてもらった。石灰岩地に生育する。上の写真には葉の広いもの(白矢印)と狭いもの(青矢印)の二つがあるように見えるが、どちらもキドイノモトソウ。この違いは葉の裏に胞子嚢をつけているかどうかの違い。胞子をつけている方(青矢印)は胞子葉と呼ばれ、次代をになう胞子を作り飛ばす役割をもった生殖用の葉である。胞子をつけない方(白矢印)は、もっぱら光合成をおこなって栄養を作るため栄養葉と呼ばれる。

 イノモトソウに近縁な植物だが、やや形が違う。葉のまん中の軸に、翼(よく:帯状の葉のような部分)があるのがイノモトソウ(下の写真右)、ないのがキドイノモトソウ(下の写真左)だそうだ。

キドイノモトソウ(左)とイノモトソウ(右)の比較。中軸の翼(黄色矢印)の有無で見分ける。
 石灰岩地を好む植物ということでややまれなので、大事にしたいものである。

2014年4月20日日曜日

オオバノハチジョウシダ

オオバノハチジョウシダ Pteris terminalis Wall. ex J.Agardh
(イノモトソウ科 PTERIDACEAE)


オオバノハチジョウシダ。葉の長さ約1m。しかしこれでも小さい方。
 山地の湿ったとこを歩いていると、大きなシダに出会うことがある。葉は櫛の歯のように切れ込み、時には2m近くにもなる。とても大きくなるが、イノモトソウ科ということで、身近にあるイノモトソウの仲間。

 これは生えているとついつい標本にしたくてとってしまうが、大きな植物は折り畳んで標本にするのが面倒かつコツがいり、いつも後悔してしまう・・・

イノモトソウ

イノモトソウ Pteris multifida Poir.
(イノモトソウ科 PTERIDACEAE)

身近なシダ。イノモトソウ。

 シダに馴染みがないといっても、これは見たことあるだろう。人家の庭、道端の石垣の隙間、コンクリの割れ目、ちょっとした隙間に必ずと言ってもいいほど生えているシダの仲間である。

 特に利用されることもなく、かといって害があるわけでもなく、私たちの近くに極普通にある植物。それだけに、ついつい見過ごしてしまう。

フトヒルムシロ

フトヒルムシロ Potamogeton fryeri A.Benn.
(ヒルムシロ科 POTAMOGETONACEAE)

フトヒルムシロ

 池などのやや水深があり流れの緩やかな環境に生育する水草。水底に根を張り、水面まで茎をのばす。水中と水面の葉では形が異なる。水中にある葉は細長く沈水葉と呼ばれ、水面に浮く葉は幅広く浮葉と呼ばれる。

 水草には四つの生活型があるといわれている。大まかに言うとこんな感じ。

  1. 抽水植物:水底に根を張り、水面よ上まで高く伸びる。水深が浅い場所に生える。イグサホタルイガマ、ヨシなど
  2. 浮葉植物:水底に根を張り、茎を長く伸ばして水面に葉を広げる。抽水植物より水深のある場所に生える。ヒシなど
  3. 沈水植物:水底に根を張り、水中に没して生活している。水流のある環境に生育している。茎や葉は柔らかくしなやかで、流れのある環境に適応していると考えられる。エビモ、オオカナダモなど
  4. 浮遊植物:水底に根を張らず、水に浮かんで生活する。水深の制約がなく、開けた水面を独占できる。アオウキクサなど
 このフトヒルムシロは2の浮葉植物とも3の沈水植物とも言える。温かい季節には浮葉を増やし旺盛に成長したり、やや流れが強い場所では沈水葉が多くなったりと、季節や環境によって生活の仕方を微妙に変えて生き延びているようだ。

ヒメガマ

ヒメガマ Typha domingensis Pers.
(ガマ科 TYPHACEAE)

細いソーセージ ヒメガマ

 前回のガマよりも細い花穂をつけるのがヒメガマ。ガマとの見分けは、ソーセージの太さを見ればだいたい分かるんだけど、厳密には少し違う。ソーセージ(雌花の集まり)の上の方に枝がでていてそこに雄花の集まりが付くんだけど、そのソーセージと雄花の集まりの間に隙間があり、花が付いていない枝があるのが、ヒメガマです。ソーセージと雄花の集まりが互いにひっついているのがガマと考えればいいかと。

 ただ、最近モウコガマTypha laxmannii Lepech.という種が、ヒメガマと混同されているという報告が出た。
日本のモウコガマ : 兵庫県産「モウコガマ」の再検討
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009495497
 雌花に小苞片というピラッとしたものが付いているかどうかが区別点で、あるのがヒメガマ、ないのがモウコガマということだ。今シーズンはちょっと調べてみようか。

水辺のソーセージ 「ガマ」

ガマ Typha latifolia L.
(ガマ科 TYPHACEAE)

用水路に生えるガマ

 夏になると水辺に1m以上もなる背の高い植物が生える。その茎の先には大きなソーセージのようなものがつく。これがガマ。このソーセージは雌花の集まり。見た目には大きな花びらもないので、咲いているのかどうかもよくわからない。これは、花粉を風に運んでもらう風媒花なので、虫に花粉を運んでもらう花の様に、虫を引きつける華麗な花びらは不必要で発達していない。
 
 古事記だったか、因幡の白ウサギが、ワニ(サメ)をだましたために毛皮をはがされ泣いていたところ、大国主の上がガマの綿毛をつけるようアドバイスした、と言う話がある。

 これに出てくるガマはこのガマ(ただし、ガマの仲間はいくつかあるので、この種かどうかは不明)。このソーセージの部分は、綿毛を持ったタネが綺麗に折り畳まれてぎっしり並んでできている。これをほどくとタネの綿毛が広がり、フワフワになる。この綿毛が風を受けて飛び、新たな生育地へタネが運ばれる。受粉においても、種子の散布においても風に頼る優雅な植物だな。

ホタルイ

ホタルイ Schoenoplectiella hotarui (Ohwi) J.D.Jung et H.K.Choi
(カヤツリグサ科 CYPERACEAE)

湿地に生えるホタルイ
 前回紹介のイグサとよく似ている。葉は筒状になって茎の根元を包み、外観のほとんどは茎という体制をしていて、ツンツンとした印象がある。ぱっと見て違うのは花の集まりのぶぶん。ホタルイの仲間はたまご型の花穂をしている。イグサは散状なので・・・と書いて写真を探したがない。普通種の写真ってなかなか撮らないんだよ・・・反省。
ホタルイの花穂はたまご型
 以前に紹介したイヌホタルイ(http://tetsuya34.blogspot.jp/2011/09/blog-post_13.html)との見分けは、めしべの先(柱頭)がいくつに分かれているか。このホタルイは先が3つに分かれる(イヌホタルイは2つに分かれる)。これは虫眼鏡で観察しないと分からない。

 虫眼鏡で見るような小さなめしべの分かれ方で種を分けるのか?そんだけの違い?という疑問を持つ方も多い。ホタルイは自然の湧水地や山に近い水田周辺などのやや自然度が高い環境に多く、イヌホタルイは低地の水田地帯など人為的影響が高い場所に多く生える傾向があるようだ。また、細胞の中の染色体の数を調べると、犬ホタルイの方が多い。生活の場所も、遺伝的な特徴も違うので、外観はよく似ていても別の種にされている。



イグサ

イグサ Juncus decipiens (Buchenau) Nakai
(イグサ科 JUNCACEAE)

湿地に生えるイグサ

 湿地や湖沼、休耕田などの水が浅く張るようなところの生えている。湿地の植物を観察するようになると必ず気づく、極普通に出会える植物。葉は筒状になっていて茎の根元を包むだけになっていて、上に高く伸びているのはほとんど茎、という植物。長く細く伸びる茎が広く利用されている。
 
 イグサは別名とうしんそう(燈芯草)という。この茎の芯を灯明の芯に使ったためらしいのだが、さすがに実際に使っている様子を見たことはない。灯明っていつぐらいまで使われてたんだろう?

 イグサは漢字で書くと「藺草」。日本人であればおなじみの畳表に使われる「藺」と同じ種の植物である。ただし、栽培されて畳表などに利用されるものはコヒゲJ. decipiens (Buchenau) Nakai 'Utilis'と呼ばれるもので、花が小さく、あまり咲かないそうだ。写真のように花が咲くと、その部分に節ができて折れやすくなって畳表への加工に不向きであるため、花が咲きにくいように品種改良されたのだろう。

 熊本県は畳表生産日本一で、国内生産の95%を占めるそうだ。宇城、八代、球磨地方などで生産が盛ん。熊本市から南に下り竜北町辺りになってくるとイグサ畑(田?)が目立つようになってくる。
(参考ページ)
畳がいちばんキャンペーン
http://www.yatsushiro.org/tatami/campaign/<br /> 熊本県い業生産販売振興協会
http://www.kumamoto-tatami.com/

 畳といえば、その肌触りと香りが特徴。新しい畳の香りはうれしい。しかし、野に生えているイグサをちぎって臭いをかいでも、畳の香りはしない。草の臭いがするだけ。畳表の香りは、イグサを収穫したあとに行われる「泥染め」という行程で生まれるそうだ。
(参考ページ)
畳表の泥染め
http://www.tatami-kumaki.com/sendo.htm
さて、このイグサ、実は史前帰化植物の一つと考えられている。史前帰化植物とは、字のごとく、「史前」つまり歴史が記される以前に、本来の分布域からヒトの力で移されて定着した植物のこと。大陸や半島からのヒトの移動および稲作や畑作の伝来にともなって日本に入ってきたと考えられている植物たちである。
 
 イグサはたまたまついてきたのか、ゴザなんかに利用するために持ち込まれたものが逃げ出して野生化したのか・・・?
 
 野生のイグサをつかって、観察会のときの簡単な工作とかできないかなぁコースターとか。

2014年2月17日月曜日

アリタケの仲間?

アリタケの仲間(種不明)
シダの葉裏に付くアリタケの仲間
 写真を整理していたら、いわゆる冬虫夏草の仲間の写真が出て来た。水辺に近いような環境でシダが生えている場所で、シダの葉の裏をこまめに見ていくと見つかることがある。

 冬虫夏草は、カビやキノコの仲間が昆虫に取り付き、昆虫の体内で成長し、最後には昆虫の体を突き破っていわゆるキノコが出てくる。

 スマホのカメラではあまり鮮明にとれなかったので、トレースで図におこしてみた。生物の図を書くなんて、大学の頃の実習でかなり苦労したので、極力やらないようにしてた(逃げてた)んだが・・・まあ、その甲斐あっていい出来ではない。
まあ、こんな感じ・・・
 今回の冬虫夏草の宿主は、おそらくチクシトゲアリ。アリは菌に取り付かれ、体内に菌が充分増えたら、シダの葉の裏に移動し、葉につかまったままの状態で死を迎える。死ぬというとコロッと転がりそうなもんだけど、キノコを作って胞子を飛ばしやすいとことに移動して、つかまって死ぬ。なにか操られてるんだろうなぁ。不思議だ。

 アリの頭の後から伸びている枝状のものが、いわゆるキノコと考えていいのだろう。本当はこの枝の先の方に胞子を作る器官がつくはずだが、折れているのかぷつんと途切れたような形になっている。

 これ、最初はイトヒキミジンアリタケかな?と思ったのだが、図鑑や写真検索するとなんだか違う気もする。図鑑やネットの写真は1本伸びて先にこぶ状の子嚢果がついているが、写真のものは枝分かれしている。こんな形にもなるのかなぁ・・・


 ここ数年、冬虫夏草の仲間を見ることが増えてきた気がするので、図鑑なんかを眺めてみたが、見てて楽しかったのは冬虫夏草ハンドブック。冬虫夏草をとりにいきたくなるよ。